幼児の発熱
2005年4月

平熱と発熱のメカニズム・対処の理論について
 体温は朝より夕方のほうが高く日内変動があります。ふだんの平熱よりも1度以上の上昇があれば、発熱と考えられますが38度以上あれば明らかに発熱といえます。一般には、腋窩温で37.5度以上あると発熱とされています。
 熱中症やうつ熱による発熱は、冷やすことが有効であり、解熱剤は使いません。細菌やウイルスに感染すると、免疫反応で産生されたサイトカインがプロスタグランジンを産生し、プロスタグランジンは脳の体温調節中枢に働いてサーモスタットの温度設定を上昇させます。このため、皮膚血管は収縮し、発汗減少、筋肉の震えがおこり、体温は上昇します。解熱剤はプロスタグランジンの産生を抑制することによってサーモスタットの設定温度を下げ、そのため皮膚血管拡張、発汗増加がおこり、体温下降します。理論的にはいくら冷やしても体温調節中枢は高い設定温度を保とうと、さらに熱産生を増やし、体温は下がらないことになり、熱を下げるには解熱剤を投与することになります。解熱剤はアセトアミノフェイン(ナパ、アンヒバ坐剤など)が無難です。常用量で、1.5度から2度弱の解熱が期待できます。ただし、効果は短時間のみです。解熱していると通常、元気が出て、その間食欲が出るメリットがあります。必要水分量もその分減ります。

発熱についての考え方
 発熱は気分を不快にし、食欲低下を招き、必要摂取水分量を増加させ、元気なくなりますので、おかあさんを心配させます。からだが病原体に対抗するため体温を上昇させ病原体を殺そうと戦っているのだから、体温を下げると病原体に有利になり、熱のあるほうがいいのだと最近いわれることもあります。しかし熱は下げるべきではないという意見は全面的に支持されているわけではありません。ヒトはもう何千年も昔から、世界のどこでも、発熱時には、冷やし方は種々ですが、冷やして体温をさげてきたのです。
 

高熱時の対処と脳への影響について
 39度以上の高熱があれば、おかあさんは不安になるでしょうが、他に目立った症状が無ければ、39.5度以上に上昇したら、一応要注意と考えてください。また40度以上の高熱がみられれば、入院も考慮される病院もあるかもしれません。しかし41度までは熱のために脳神経が障害されることはまず無いとされています。また41度以上の発熱は感染症以外の原因によることが多いといわれます。発熱によって体温が41.5度をこえることはまれですが、42度以上の高体温が持続すると、ヒトのたんぱく質は異常分解し、危険域です。以上のことから、41度以上の発熱は、下げなければいけません。安全域を考慮して、40度台後半になったら必ず下げるのが賢明です。

家庭でのケア
 発熱するとき、体温上昇中は冬は温かくし、夏は初め冷やしません。冷やすときには上昇しきってから、冷やしましょう。氷嚢をあてる場所は、大きな血管の走っている側頚部、腋窩、ふともものつけね(ソケイ部)のあたりが適当です。氷枕をしたり額を冷やしても、解熱効果はあまり期待できませんが、気分を爽快にさせ、食欲がでるでしょう。
 室内は冬は20−24度、夏は26−28度は確保したい気温です。湿度は60〜70%が適当です。一般に足元は気温が低く、上ほど気温が高いので注意が必要です。
 発熱時は不感蒸泄で失われる水分量が増えますので、その分、水分摂取に努めます。下痢、嘔吐を伴うときは、電解質も多く喪失するので、イオン水(電解質液)などを与えて補充しましょう。吐き気がおさまってから経口摂取を開始します。
 微熱時入浴するばあいは、熱いお湯にどっぷりつかると、当然体温は上昇するので好ましくないでしょう。ぬるめのお風呂にいれるといった対応をしましょう。

 
解熱剤の使用
 一般的には体温が38.5度ー39度以上の上昇があり、不機嫌で具合が悪そうなときクーリングなどに併用して解熱剤が使用されます。アセトアミノフェイン(アンヒバ坐剤、ナパなど)とイブプロフェン(ブルフェンなど)が安全性の高い解熱剤で推奨されています。最近の傾向から、高熱でも機嫌良好、食欲良好といったときは、水分摂取に努め、あえて熱は下げないで様子をみることも多くなったようです。しかし、限度はすでに述べたように40度台後半で、このときは下げるのが賢明です。
 熱性けいれんをおこしたことのあるばあいは、けいれん予防のヂアゼパム坐剤を使用することがあります。また解熱剤は38度になったら、早めに使用します。詳細は熱性けいれんの項に記載します。

発熱をともなう疾患
 1.感染症
     ウイルス感染  種々のかぜウイルス(発熱の原因としてはこれが圧倒的に多い)
                ウイルス性肺炎、気管支炎
                インフルエンザ
                突発性発疹
                無菌性髄膜炎
                ウイルス性心筋炎
                その他のウイルス性疾患、ウイルス性発疹症
     細菌感染     尿路感染症
                咽頭扁桃炎、肺炎、気管支炎
                中耳炎
                髄膜炎
                急性腸炎 など
     マイコプラズマ感染  肺炎などの気道感染がほとんどですが、ほぼ全身の臓器感染症
                   がおこり得ます
     他の感染症
 2.川崎病
 3.熱中症、うつ熱
 4.白血病などの血液疾患、悪性腫瘍(まれ)
 5.膠原病
 6.内分泌疾患
 7.中枢神経の疾患
 8.その他疾患                                         
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