クループ〜2005.07.29〜2010.01.30

 ケンケーン、バウバウーと犬の吠えるような特有の咳をし、かれ声となります。声が出ないこともあります。ぜこぜこと喘鳴が認められることもあります。息を吸うのが苦しいと訴えます。昔はジフテリアによる急性喉頭炎を真性クループ、その他を仮性クループと言われた時代がありました。また、1〜2歳の幼児に好発する、夜間に急に上記症状があらわれ、夜が白むころ症状が軽快する呼吸困難発作が2〜3日続くことがあり、アレルギー性機転と考えられ、これを仮性クループといった時代もありました。今はすべての喉頭及びその周辺の疾患群を包含した、クループ症候群という呼び方がポピュラーになっています。喉頭及びその周辺の、炎症性あるいはアレルギー性原因による、急性の疾患が主であり、クループ症候群の分類は下に記しますが、ウイルス感染による急性喉頭炎がもっとも多いようです。
 嗄声、犬吠様咳嗽と軽い呼吸困難といったケースから、呼吸困難が強く、チアノーゼ、意識障害を認める重症ケースまでありますので、はやめに耳鼻科など医療機関を受診することになります。治療は原因疾患により違ってきますが、喉頭の炎症やアレルギーの場合、軽症例はボスミン液の吸入、ステロイド薬の吸入、ステロイド剤の輸液、酸素吸入などが選択され、初期治療が開始されます。アナフィラキシーショックはボスミン皮下注。あとは、患者の病状、原因疾患により、治療法が選択されます。急性喉頭蓋炎などで重症となった例では、挿管や、気管切開の必要となるケースもあります。このような場合は、耳鼻科医や麻酔医の常勤する病院で処置される必要があります。きわめて緊急な事態なわけです。


8歳でクループ症候群と診断されたケース
既往歴として、2年前に、生たまごを食べたあと1時間以内に、がらがら声になり、のどが苦しくなった。口の周りに膨隆疹が出現した。IgE卵白クラス2.だった。現病歴は、入院前日朝、のどの痛みとがらがら声出現。入院当日夜に息苦しくなり受診、38度。犬吠様せき、嗄れ声、喘鳴、吸気性呼吸困難あり。
左側は内視鏡の写真で、右側は180度回転加工した。

                               

入院翌日耳鼻科受診
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1週間後
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                                http://www.hat.hi-ho.ne.jp/kboy/fig-throat.htm(参考文献)
                                  

広い意味でクループ症候群に入る疾患
 1.感染症
     ウイルス感染  一部のウイルス感染による(原因としてはこれが圧倒的に多い)
     細菌感染     ジフテリア(真性クループ):最近はあまりみられなくなったし、あっても軽症がほとんど
                他の細菌
 2.アレルギー  食物アレルギーなど
            仮性クループ
 3.喉頭異物など
 4.その他

感染症の部位による病名
 1.急性喉頭蓋炎 きわめて重症になりうる  http://snail.exblog.jp/1620020(参考文献)
             b型インフルエンザ桿菌感染による(肺炎球菌、A群溶蓮菌もあるという)
 2.急性喉頭炎
 3.急性声門下喉頭炎
 4.急性喉頭気管炎
 5.喉頭気管気管支炎

診断
1.ウイルス感染に続発するもの〜発熱、咳、鼻水などかぜ症状に引き続く発症;急性声門下喉頭炎
2.夜間突然の発症〜明け方軽減;仮性クループ
3.食物アレルギー;特定食品摂取後2時間以内の発症、じんましんに続発など。
4.激しい咽頭痛、発熱、嗄れ声etc〜を伴う呼吸困難;急性喉頭蓋炎(細菌性)
5.偽膜形成;ジフテリア、真性クループ、現在の日本ではきわめて稀となった。
6.異物;病歴、発症状況から、診断は通常容易。
耳鼻科医による内視鏡検査が受けられれば、いずれの場合も、診断は委ねられるが、耳鼻科医不在の場合は、小児科医は状況から迅速な診断を下さねばならない。

急性声門下喉頭炎の治療
吸入;ボスミン0.1cc  生食1cc リンデロンA液1-2-3滴  4〜6時間ごと、症状により増減
(吸入;メプチン0.1cc  ビソルボン1cc 1日2回)
酸素テント 24%スタート SatO2 95%以上維持
ソリタT1 輸液開始
抗生剤 点滴
ステロイド剤;デカドロンまたはサクシゾン点滴
内服可能なら処方;

参考文献
別冊NHKきょうの健康、これだけは知っておきたい耳・鼻・のどの病気 NHK出版、2001
あかちゃんの病気&ホームケア大百科、ひよこクラブ特別編集、2004
                                         キッズ健康トラブルへ

最近のケース  2010.01.30追記
case 7y0m female 22Kg
経過 day0(水) 午後プールにいき、夕方から咽頭痛あり、眠前に市販薬を内服。
day1(木) 翌日2:50AM痰がらみあり息が苦しいと訴えあり、37.8度。3:05AM当院救急外来を受診した。P 103 spo2 99%
喘鳴あり、胸部に乾性ラ音が聴取された。hoarseness+、頚部側面軟部撮影、胸部レントゲン撮影を受け、入院す。

ロセフィン0.5gx2/day d.i.v. デカドロン6mg 12h毎3回d.i.v. ソリタT3 60ml/h 夜間酸素テント25% 空冷 湿度60%目標
吸入ボスミン0.2ml 生食2ml リンデロンA4滴 4時間ごと使用
CRP0.023mg/dl インフルエンザ迅速(-) RSウイルス(-) 咽頭アデノウイルス(-) WBC7,100 ST24% Seg29% Eo2% Ba0%

午後症状の軽快あり、喉頭2方向Xp撮影(下) 午後症状がさらに軽快し、歌を歌っていたとの話で、夕方嗄れ声がひどくなっていた。声を出さないようにしてもらう。
夜間は酸素テント使用。

day2(金)の頚部側面軟部撮影、胸部レントゲン写真(下)


day3(土)耳鼻科外来日受診
急性喉頭炎

喉頭(声帯)から気管にかけ著名な発赤、腫脹を認める。喉頭蓋は浮腫(−)

デカドロン3mg div 追加
day4(日)退院。

day6(火)耳鼻科外来受診


入院時の咽頭培養:Viridans Strep 1+
入院時の血液培養 陰性
入院時の右鼻腔培養:Corynebacterium sp. 1+


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