BCG接種について(問診票用)
 2005年4月〜2015年8月


法律の改定について2015年8月
 結核予防法が廃止され、BCG接種に関しては予防接種法に追加された。定期のBCG接種は、生後1歳に至るまでの間にある者が対象者で標準的な接種期間は生後5月に達した時から生後8月に達するまでの期間とされた。1回受けることになり、平成25年4月より実施。接種部位は、上腕外側のほぼ中央部とし、肩峰に近い部分はケロイド発生率が高いので避けなければならないとされています。従来BCG接種に先立っておこなわれていたツベルクリン反応は行いません。このため、後述するコッホ現象についての理解が必要です。

予診票についての考え方
 生後、家族などに結核患者が発生し、その患者に接触があるばあい、保健所の接触者健診を受けて異常が無かったばあいは、接種が可能で、健診を受けていないばあいは、精密検査を受けるよう指導されます。精密検査を受けて結果に異常がないばあいは、次の機会にBCG接種を受けることができるとされています。

接種後の留意点について、特にコッホ現象について
 BCG接種後10日までに接種部位に明らかな発赤や腫脹、針痕部位の化膿など(コッホ現象)が見られたばあいには結核に感染している可能性が高いとされます。すでに結核の診断を受けたあかちゃんはBCGを受ける必要はありません。知らないあいだに、結核菌の感染を受け、結核菌に対する抗体ができているあかちゃんにBCGを接種すると、コッホ現象が見られる可能性が高いわけです。接種後10日以内に接種局所の発赤・腫脹及び針痕部位の化膿等を来たし、通常2週間から4週間後に消炎、瘢痕化し、治癒する一連の反応が起こることがあり、これをコッホ現象と定義しています(参考文献8)。これからはツベルクリン反応は行わないので、コッホ現象にも留意が必要で、疑われるばあいは、医療機関を受診するようにとされています。

BCG接種の正常反応
 健常者がBCGを初めて接種した場合、接種後10日頃に針痕部位に発赤が生じ、接種後1月から2月までの頃に化膿巣が出現することがある。このような変化は接種後1ヶ月頃で最も強い。やがて個々の針痕部位には痂皮が生じ、3ヶ月頃までには落屑してちいさな瘢痕を残すのみとなる。

法律の改定の問題点について
 1.生後12ヶ月以内の定期接種を受けられなかったばあい、任意接種となり、費用がかかり、万一のばあい国の予防接種禍救済の対象にならない。
 2.発熱の項で述べたように、生後3ヶ月未満の発熱は入院が考慮されます。特に1ヶ月以内の新生児期は即入院です。免疫機構が充分機能発達していないため、従来生後3ヶ月までは予防接種の対象外とされていたのです。今回のBCG接種は、生直後より可能とされたのが、妥当か問題です。しかし、実際の運用においては、平成25年4月からは標準的な接種期間を生後5月に達した時から生後8月に達するまでの期間と定められました。(なお2007年4月予防接種法に追加されたBCGワクチンは生ワクチンなので、生後3カ月未満での接種は非推奨と、予防接種法 - Wikipedia
には記載あり。)

おじいちゃんが開放結核(結核菌を排菌している肺結核患者)と診断されました〜(シミュレーション)2005年4月作成文
 結核予防法が改定され、それにともなった法令や、予防接種法も改定されました。しかし、その詳細については一般にまだ周知されていないのでよくわかっていません。以下は2005年4月時点での想定ですので、そのつもりで読んでください。最近おじいちゃんは体調がすぐれず、微熱に咳、痰が2週間以上続いたため、病院を受診したら、開放結核だといわれました。家には生まれたばかりのあかちゃんがおり、おじいちゃんは毎日かわいいと抱いてあやしていました。おじいちゃんを診断した病院の医師は保健所に開放結核患者の発生を通知します。保健所は家族の健診を行います。結果、あかちゃんは胸部レントゲン写真正常、ツベルクリン反応陰性であり、BCG接種を勧告されます。おかあさんはあかちゃんをつれて小児科を受診しました。担当の小児科医は、乳幼児結核が発症したときのリスクを説明し、免疫機構のまだ未熟な新生児にBCGを接種する有効性とリスクを説明し、さらに診察と詳細な家族歴の聴取、場合によっては検査追加の結果、先天性免疫不全症の可能性の低いことが想定されたら、それを説明し、さらに、免疫機構の不十分な状態(新生児のため)であるにもかかわらず、BCG接種を受けたほうがいいと判断される理由を説明し、母の了解のもと、あかちゃんはBCB接種を受けます。(通常の定期にあたる接種時期である4ヶ月健診よりも早まり、非定期のため自費となる?予防接種禍の場合、集団の定期接種でないが国の救済対象になるか?)。以下のような対応も考えられます。

石橋をたたいて渡る
 参考文献、東京医学社、小児内科Vol.30No5.1998-5.P669-673によると、結核患者との接触者健診で、ツ反が陰性だった場合にはBCGを接種するように勧められているが、決してすぐに行ってはならない。その接触者はたとえ健診時のツ反が陰性であっても、すでに感染を受けて潜伏期間にある可能性が否定できないからである。このような場合には、必ず2〜3ヶ月後に再度ツ反を行わなければならない。とくに、BCG未接種の乳幼児や濃厚な接触が疑われる場合には、その間イソニアジド(INH)の予防内服を行ったほうがよい。2回目のツ反でも陰性の場合にはBCG接種を行う。もし初回のツ反でBCGを行ってしまうと、以後ツ反では結核感染の証明が困難になってしまう。

BCGの目的と効果について
 BCG接種の主目的は小児の結核性髄膜炎や粟粒結核の予防にあり、高い予防効果を示す。また、肺結核にも約50%の予防効果ありとされる。

BCG接種の副反応
 1.所属リンパ節の腫脹、化膿
 小児内科Vol.16No10,1984-10,p21「BCG」によると、BCG日本株では所属リンパ節の軽度の腫脹0.2%に対し、台湾のフランス株では所属リンパ節の10mm以上の腫脹を8.5%にみたという。1984年の文献では、都立清瀬小児病院では2cm以上はINH投与、小さいものは経過観察したと報告されている。そして摘出は膿瘍化した場合に限るとした。
 予防接種ガイドラインによると、接種後1ヶ月前後から0.7%の頻度で接種側の腋窩リンパ節腫大をみ、数ヶ月の経過で徐々に縮小していく。接種例の0.02%の頻度で、化膿性変化をきたし、皮膚に穿孔、排膿をみる。リンパ節腫大については特別の措置は不要である。また、その化膿性の変化についても局所の清潔だけでよいとされている。(なお、旧版では、0.02%以下の頻度で、ごくまれに穿孔、排膿することがあるが、この場合には、抗結核薬の内服、局所塗布を行う。とある)
 小児内科Vol.30No5,1998-5,p669「BCG接種の実際と副反応」によると、文献考察で7mm以上のリンパ節腫大は0.73%、10mm以上は0.40%で、ほとんどが無治療で2ヶ月以内に軽快したという報告を紹介している。また4例の自験例を報告し、1例は自壊前に摘出、1例は自壊したあと、INH,PC投与、さらにその後摘出、他の2例は経過観察で軽快したという。そして、早期に摘出が好ましい例もあると述べている。
 予防接種に関するQ&A集によると、3ヶ月児にBCG接種し、1〜2ヶ月後触診すると、約1%の頻度で腋窩リンパ節腫大がみられる。おおきいもので2cm程度までで、次第に縮小し、自然に治癒するという。この程度のリンパ節腫脹は正常反応と考えられる範囲内であり、きわめて稀に瘻孔を形成するので、経過観察が必要であるという。また3cmを超える大きさになれば、INH投与など必要となるが、原則として、外科手術は必要ないと記述されている。
 小児内科Vol.32 No.10予防接種Q&Aでは、3ヶ月前にBCGを受けた側の腋窩リンパ節が大きくなったのに対し、ほとんどが特別な治療をしなくても軽快し、時にリンパ節が化膿して皮膚に穿孔することがある。処置については、無処置から抗結核薬の内服・塗布、穿刺琲膿、摘出までのさまざまな意見があり、確定されていない。このように定まった処置法は無いが、局所の清潔だけでも軽快すると述べている。そしてBCGリンパ節炎の7経験例を紹介し、経過観察した結果、5例が自壊し、最終的に全例が軽快したと述べている。
 このように対応の選択は多様であり、主治医はケースごとの慎重な判断が求められる。市町村長に提出する副反応報告書提出により、保健所からの指示が得られるのであれば、明解かもしれない。以上の文献をまとめてみると、BCGリンパ節炎と診断したら、2cm未満は経過観察、2〜3cmはケースバイケース、3cm以上は抗結核薬INH内服、膿瘍が自壊しそうなあるいはしたときは、局所の清潔のみ、または摘出を含め、外科処置の選択といった選択肢が考えられる。

 2.原発性免疫不全症候群の赤ちゃんにBCGが接種されたばあい
 きわめて稀な疾患ですが、致死的な全身感染症となります。3ヶ月未満児にBCGを接種するばあいは、きわめて稀な疾患ですが、原発性免疫不全のあるあかちゃんでないかの見極めが必要です。もちろん4ヶ月以降に発症するケースもありえますが、その場合、集団接種の場で発見するのは至難でしょう。反復する肺炎、気管支炎にかかったことが無いか、持続性の下痢が無いかなどのチェックも必要でしょう。問診票の項目が適切か再検討が必要かも知れません。

 3.BCG接種後副反応報告書報告基準
  2ヶ月以内に所属腋窩リンパ節腫脹が直径1cm以上
  1ヶ月以内に接種部位の膿瘍形成
  6ヶ月以内に骨炎、骨膜炎の発症
  6ヶ月以内の皮膚結核
  6ヶ月以内の全身播種性BCG感染症

  その他、通常の接種ではみられない異常反応

BCG接種後所属腋窩リンパ節腫脹をきたしたケース
 症例;11ヶ月男児
 主訴;高熱と左腋窩の腫れ
 現病歴;発熱し、左腋窩が腫れて痛そうに泣くためと病院を受診した。
 所見;左腋窩リンパ節24x22x15mm位実測、類円形の腫瘤が皮下にあり、可動性大、
 触診では圧痛無い様子。BCG接種を受けて1ヶ月目とのことであった。接種管針部位は
 皮膚発赤、接種部分の膿疱がみられた。急性上気道炎と、BCGリンパ節炎の診断
 経過;タミフル、ホスミシンの内服処方、3日後には解熱。エコー検査でリンパ節2個あり、
 最大長径21.8mm
                                            

初診後3日目
初診後3日目
初診後24日目
初診後24日目

参考文献
1.予防接種ガイドライン 日本小児科連絡協議会予防接種専門委員会、監修 厚生省保健医療局エイズ結核感染症課
                 1994年9月
2.予防接種ガイドライン 予防接種ガイドライン等検討委員会、監修 厚生労働省健康局結核感染症課
                 2003年11月 改定版
3.予防接種ガイドライン 予防接種ガイドライン等検討委員会 2005年 改編
4.小児内科、Vol.16 No.10 p1613-1619,1984,東京医学社
5.小児内科、Vol.30 No.5,p669-p673,1998,東京医学社
6.予防接種に関するQ&A集、2004.p50-p55,社団法人 細菌製剤協会
7.小児内科、Vol.32 No.10 予防接種Q&A、p1634-p1636,2000,東京医学社
8.厚生労働省健康局長、定期の予防接種の実施について、健発0127005号、平成17年1月27日
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