多嚢胞性異形成腎multicystic dysplastic kidney(MCDK)

A.胎児超音波検査で見つかる先天性腎尿路異常についてのURL 
1.
胎児の泌尿器科系異常を見つけたら大阪府立母子保健総合医療センター 泌尿器科 島田 憲次http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/1004_01/hinyou.htm 
2.胎児泌尿器系異常 (閉塞性尿路疾患、嚢胞性腎奇形など)を見つけたら (産科編) 国立成育医療センター 周産期診療部 胎児診療科 林 聡 、 左合 治彦http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/1004_02/hinyou_ob.htm

B.多嚢胞性異形成腎 の成り立ちMCDKは胎生10週以前の尿管芽膨大部の発生障害のために生じる腎盂は形成されない。参考文献2

腎尿路系の発生とその異常 参考文献1浅川光夫 小児内科 Vol.27 No3. 1995を参考に、(画像も模写)

腎は体節と側板の間に現われる中間中胚葉の腎板に由来するという。

ヒトの胚子では、前腎、中腎、後腎(永久腎)が順に発生する。
前腎は胎生3週の中頃現われ、5週の初めに退化する。
中腎は胎生3週末から4週末に現われ、16週頃までに退化する。


前腎は短期間で退化消失するが、腎板背面に細胞索が形成され、中空化して、前腎管となる。前腎管は尾方に走り、胎生4週の終りには排泄腔に開口する。


前腎退行後、前腎管の大部分は中腎の形成に利用される。


後腎は中腎の尾背側に胎生4週から5週初めに現われ、11週から13週で尿を作り始める。


中腎管((Wolff管)は、やがて男性では性管となる。


後腎は尿管芽(後腎憩室)と造後腎芽体(後腎中胚葉)からつくられる。尿管芽は中腎管の背側部から芽として発生し、茎は尿管となり、その頭方端の拡大部が腎盤となる。


腎盤原基は突起が順次現われ、造後腎芽体に侵入し、集合管を形成する。腎盤部では集合管が合体して小腎杯を形成する。

集合管を取り囲む造後腎芽体では組織の一部が腔を持った細胞集団を形成し、これから尿細管とボーマン嚢がつくられる。

胎生8〜9週に片側または両側の腎集合管に異常が生じ、集合管が拡大すると多発性嚢胞腎となる。発生末期の尿道通過障害により、二次的に集合管やボーマン嚢が膨化しpolycystic kidneyとなることもある。 参考文献1


MCDKは胎生10週以前の尿管芽膨大部の発生障害のために生じる腎盂は形成されない。典型例は腎臓はブドウの房のように嚢状である。1歳までは腹部腫瘤、腹部膨満。 参考文献2

尿路閉塞が胎生10週以降に生じると、非典型的な水腎症型のMCDKとなる。このタイプでは、尿管は欠損するものの腎盂ならびに腎杯は欠損しない。参考文献3
尿管の発生:尿管の原基は胎生5週目に中腎管の最尾側背部から出る小さな憩室様突起物の尿管芽として発生する。尿管芽は造後腎芽体の尾側部に入る。その後両者は頭側方に上昇する。

尿管下端は胎生6〜7週で中腎管と分離独立して膀胱に開口する。

膀胱の発生:膀胱の大部分は排泄腔に由来する。したがって内胚葉性であるが、膀胱三角は中腎管に由来して中胚葉である。胎生6週に排泄腔の上壁で尿直腸中隔が形成され、前方は尿生殖洞、後方は直腸となる。尿生殖洞上部が拡張して膀胱となる。

尿管芽と中腎管接合部に異常があると、膀胱と尿管の接合部に奇形が起こる(膀胱尿管逆流VUR,尿管瘤ureterocele,異所性尿管口ectopic ureterなど)。尿管芽の遠位部に異常があると、上部尿管や腎臓の奇形を発生する(盲端尿管、blind ending ureter,重複腎盤double renal pelvis,腎杯憩室など)。
尿管における閉鎖および狭窄の多くは尿管起始部および尿管の膀胱通過部でみられ、二次的水腎症や尿管水腫が続発する。
参考文献1
多嚢胞性異形成腎の経過
無症状で、問題の無い例は自然縮小を待つ。腎摘をせずに経過をみるようになってきている。


出生前後のUSでMCDKが証明されたとき、悪性所見が疑われたものや、圧迫症状の強いもの、高血圧を伴うものはまず、CT,腎シンチ、IVP,voiding cystographyなどで、確定診断と患側腎が無機能であることと、対側腎に異常が無いか確認する。参考文献2
在胎40週、生下時体重2896g、自然分娩

生後10日より嘔吐あり、また腹部がやや腫大している印象ありとのことで、生後14日に出産産科医院より紹介され、生後16日に当科を受診した。
体重3480g 体重増加36.5g/day
エコー所見



参考文献
1腎尿路系の発生とその異常 浅川光夫 小児内科 Vol.27 No3. 1995-3
2Multicystic dysplastic kidneyの合併症と治療 小島美保、他 小児内科 Vol27 No3 1995-3
3腎臓に嚢胞をみたときの鑑別 野坂俊介 小児内科 Vol.38 No 10,2006-10
                                    
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