小児喘息
2006.1.〜2008.9.

小児喘息の定義
 笛声喘鳴(ピーピー、ヒューヒュー)を伴う、呼気性呼吸困難発作を繰り返すばあい、小児喘息とする。
 患児が2歳未満のばあいは、とくに乳児喘息といい、扱いに違いが生ずる。また、思春期喘息も特徴あり、別扱いされる。

喘息発作の誘因
 多くの誘因がオーバーフローした結果、発作になるとされている。
 1.アトピー素因
     吸入抗原:家の埃〜家ダニの排泄物や死骸蛋白〜ダニアレルギー:小児喘息の多くがダニアレルギーあり。
          犬毛アレルギー、猫ふけアレルギー(上皮、唾液にも強い抗原性あり、過敏なひとは猫には近寄らない)
          花粉:杉花粉、ブタクサ、よもぎ、ハルガヤ、オオアワガエリ
          その他たくさんの花粉
          真菌(かび)の胞子:アスペルギルス、ペニシリウム、クラドスポリウム、カンジダ、アルテルナリアetc
     食物アレルギー:そばアレルギー、ピーナッツ、etc
 2.感染症〜かぜをひいて引き続き発症
 3.運動誘発〜
 4.過労、睡眠不足、精神ストレス、肉体疲労etc
 5.気候の変動、天候の変動、台風(低気圧)の接近、季節の変わり目
 6.煙刺激;たばこの煙、お線香、花火、蚊取り線香、わら焼き、焚き火、etc
 7.
 
 

発作間歇期の対処

 喘息児の気道は過敏である。
 喘息児の気管支以下の下気道壁は慢性の炎症状態にある。

上記をふまえて、発作のない状態の良いときの鍛錬など。
 1.鍛錬
    風浴
    水浴
    乾布摩擦:アトピー性皮膚炎があるときは不適切
 
 2.運動で、筋力アップ、呼吸筋のトレーニング、気道の過敏性の軽減
    水泳、プール遊び
    球技、その他いろいろ
    ランニングは発作誘発しやすいので、注意して行う。運動量としては、苦しくなってゼーゼーしたら、休憩をとり、水分補給す。休憩20分以内の喘鳴の消失を目標として休憩をいれながら、行う。発作に移行してしまうようなら、オーバーワーク。

 3.呼吸法、喘息体操


家庭での環境調整
 <ダニ対策>
 1.掃除
   電気掃除機でほこり、わたごみを吸引するが、吹き出し口からダニ死骸の細切れが吹き出されるので、窓は開放し、できれば、吹き出し口は戸外にむける。ダニ防止用のフィルターつき電気掃除機もあるようです。喘息児のいないときに掃除する配慮。本人には別の家庭内の分担しごと(たとえば、食器洗いとか)をさせる。
  2. たんすの上や電気傘のごみは、はたきをかけない。拭き掃除
  3. ふとんはあせや、ふけ、など食糧にし、ダニがふえやすい。天気の良い日は、日光にあて、乾燥させ、よくはたいたあとは、掃除機で吸引する。はたいただけであれば、ダニの蛋白成分吸引でアレルギー症状をおこす危険あり。生きたダニはふとんのかげに移動するので、布団干しは天気の良い日に繰り返す。喘息発作のひどいこで、ダニアレルギーがあるばあい、特殊な寝具が売られているが、購入するばあい、布団の選定は慎重に。
  4.現在の日本の家屋構造は機密性が高く、ダニの生え易い構造になっている。極力窓をあけ、日光をいれ、通風をはかり、ダニが生えにくいように。
  5.ダニの数 板:たたみ:じゅうたん=1:10:100
    フローリングがベスト。じゅうたんは撤去する。
  6.家具は少なくし、裏にたまるわたごみの量をへらす。
  7.ぬいぐるみはほこりがつきやすいので、おもちゃは木製、プラスチック製などほこりがつきにくく、洗いやすいものにする。

 <ペット対策>
  室内で飼わない。いぬ、ねこにアレルギーがあったら、飼育はあきらめる。

 <かび対策>
  浴室の壁、台所のかび除去
  室内に鉢植えは置かない。肥料にかびがはえる。

 <花粉対策>
  1.外出時の花粉マスク
  2.衣類についた花粉を叩き落として家に入る。
  3.うがい、洗顔、目を洗う。鼻の中も。
  4.窓は閉めて、空気清浄機。
  5.転地(杉花粉など何十キロメートルも長距離を飛ぶという事実もあります)

アレルギーマーチについて
 乳児湿疹が治りにくく、再発しやすいといったばあい、皮膚が過敏で接触性皮膚炎を起こしやすかったり、母乳に含まれる異種蛋白(卵白蛋白や牛乳の蛋白成分etc)を摂取したあと、IgE抗体を産生し、アレルギー反応をおこしたりしている場合があります。また、やがて乾燥肌が目につくようになることがあります。かゆみのため、引っ掻くと、そこが湿疹となっていったりし、アトピー性皮膚炎と診断されるばあいがあります。こういった乳幼児は、かぜをひくとゼコゼコしてかぜが治りにくく、喘息性(様)気管支炎と診断されることがあります。喘息性(様)気管支炎のこが将来気管支喘息になる率と、その既往のないこが将来気管支喘息を発症する率は同じだという報告もありますが、喘息性(様)気管支炎は気管支喘息の前段階と捉える考えもあります。やがて喘息発作を起こしたり、鼻水、鼻閉といった症状から、アレルギー性鼻炎の診断をうけたり、仮性クループを発症したり、目が痒く、アレルギー性結膜炎と診断されたりといった経過は、アレルギーマーチ(アレルギーの行進)といわれます。アレルギー反応を起こす場所が、皮膚、気管支、鼻、喉頭周辺、目と移って広まっていくさまをあらわしているようです。乳幼児期にかぜをひくと引き続いて同様にぜこぜこと喘鳴があり、喘息性(様)気管支炎と診断されても、他のアレルギー、アトピーの症状を示すことなく、アレルギーマーチをおこすことなく、おおきくなるこもいます。


発作間歇期の治療薬
小児喘息の治療は、いいかたが不適切かもしれませんが、流行がありました。(変調療法、脱感作療法、メジヘラ等の吸入は小児には危険、不適切といわれた時代、ステロイド剤の投与は小児は極力避けるべきといわれた時代、ステロイド剤の吸入は不適切といわれた時代、キサンチン製剤全盛期、RTC療法、キサンチン製剤の脳への影響報告、抗アレルギー剤の吸入療法、抗アレルギー剤の内服薬全盛期、抗アレルギー薬よりも?、喘息発作はアレルギーであるという考えから、炎症であると捉え方が変わった、最も強力な抗炎症剤であるステロイド剤の積極的選択へ)
喘息をどういう病態としてとらえるかによる、考えの変遷ともとれます。

これまで喘息はアレルギー性疾患であるとされていましたが、現在は喘息は炎症ととらえる、アメリカの学問が主流となっており、それにのっとった治療が選択されるようになっています。

治療薬の選択も重症度により、ガイドラインに決められているので、詳細は専門書に譲って、現在おこなっている概略を紹介してみる。

重症度は大雑把であるが、以下のようにしている。
1.軽症:時々、軽い発作がみられる。吸入で発作は軽減する。内服は、気管支拡張剤(β刺激剤)、テオフィリン(キサンチン製剤)
2.中等症:吸入で軽快せず、外来で点滴を要する(内容はステロイド剤とネオフィリン)発作を起こすケース
3.それ以上:入院を要する発作を起こすケース

1.軽症例の薬物治療
    1.抗アレルギー薬の持続内服(日本ではよく選択されてきた。)
    2.インタールの連日吸入をおこなうばあいもある
    3.(発作時の上記内服)
2.中等症およびそれ以上例の薬物治療
    1.抗アレルギー薬の持続内服
    2.インタールにメプチン0.05mlをくわえて1日1-2回吸入連日
    3.(発作時の上記内服)
    4.キサンチンRTCを選択する場合あり
    5.ステロイド剤の連日吸入(これが主流になった)


気管支喘息のグローアウト
 
小児喘息は中学生から高校生までに軽快し、発作を起こさなくなる例が、7〜8割程度みられ、これをグローアウトとよんでいます。
治ったと判断します。逆にみれば、2割ていどの患児は思春期喘息に移行し、成人に移行する可能性があります。
基準は3年発作をみなければ、喘息は治ったとしています。


発作の程度と重症度の判断

ぜんそく日記(小児用)での発作の説明

発作 遊び 睡眠 機嫌 食事 その他
大発作 動くどころでない 起座呼吸 話しかけても
返事ができない
食事ができなくなる 息苦しく、唇は
紫色になる
中発作 動きが悪い 夜中に何回か
目をさます
話しかければ
返事をする
食欲が落ちる 小発作と大発作
の中間
小発作 普通に遊ぶ 良く眠る 普通に話をする 普通に食事をする ヒュウヒュウと
いう音がする



小児気管支喘息の薬物療法における 適正使用ガイドライン
www.mhlw.go.jp/topics/2006/07/dl/tp0727-1a.pdfより4ページ目をお借りし画像で再掲。2008.8.追記す


文献1よりの資料を画像で表示。喘息児の重症度について(年齢共通)

家庭での環境調整

喘鳴をきたす疾患の鑑別点(下線を引いたものは頻度が高いもの) 文献2
A.短時間のうちに急激な呼吸困難をきたす疾患
 1)上気道内の異物

 2)喉頭、気管または主気管支の閉塞
     a.喉頭:声門痙攣クループ、浮腫、血管性浮腫、アナフィラキシー、挿管後の逆流、乳頭腫
     b.気管:外側からの圧迫(リンパ節など)、気管内疾患(腫瘍など)
     c.気管支:外側からの圧迫(胸郭内腫瘤)、気管支内疾患
 3)急性炎症
      喉頭蓋炎喉頭炎喉頭・気管気管支炎細気管支炎肺炎
 4)急激な胸腔内圧の変化
      数葉にわたる無気肺気胸、気縦隔、広範な肺虚脱、肺葉性肺気腫、乳児硝子膜症、ウイルソン・ミキティ症候群
 5)心血管系疾患
      急性心不全、特発性心房性頻脈
 6)代謝性疾患
      急性アスピリン中毒、アシドーシス、中枢神経抑制薬(バルビタール系)、有機リン中毒

B.慢性反復性の軽度から中等度の呼吸困難をきたす疾患
 1)気管分岐部より下部の異物
 2)上気道炎
      喉頭蓋の弛緩、喉頭、声帯の麻痺またはリンパ節、ポリープ、血管輪、短く太い頚部(乳児)
 3)気管支炎、気管狭窄症、気管拡張症、肺炎(細菌、ウイルス、マイコプラズマ、ニューモシスティスカリーニ)、右中葉無気肺
 4)胃食道逆流や事故による誤飲
 5)(膵嚢胞性繊維症)

C.まれな疾患
 1)急性:テタニー、破傷風による喉頭痙攣、扁桃周囲・扁桃後膿瘍、脳炎、ヒステリー、頭部外傷、過呼吸
 2)慢性:アデノイド肥厚、リンパ節腫大による気管圧迫、結核、腫瘍転移、縦隔腫瘤、食道内腫瘤、異物、特発性食道拡張症、気管食道瘻、横隔膜ヘルニア、胃食道逆流、脳性麻痺、α1抗トリプシン欠乏症、重症筋無力症

参考文献:
1小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005、日本小児アレルギー学会作成、協和企画
2子どもの気管支喘息診療・指導ガイド、赤坂徹編集、国立療養所八戸病院院長、南江堂、2002
3吸入性アレルゲンの回避と環境改善、パンフレット、名古屋大学医療技術短期大学部教授、鳥居新平監修、ファルマシア・アップジョン株式会社
小児気管支喘息の薬物療法における 適正使用ガイドラインwww.mhlw.go.jp/topics/2006/07/dl/tp0727-1a.pdf

                                         
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