年初冬から春先にかけて、インフルエンザAとインフルエンザBが流行します。典型例は突然の高熱で発症し、咽頭痛、咳、たん、鼻水などの呼吸器症状に加えて、頭痛、倦怠感、筋肉痛や関節痛などを伴い全身症状が強く、インフルエンザBは腹痛、下痢などの消化器症状も伴うことが多いです。インフルエンザに罹患すると発熱は4日くらい続き、回復まで1週間程度かかります。学校保健法では、インフルエンザは解熱し48時間たったら、感染力も低下し、大丈夫と判断できる時期であり、本人の体力も回復すると考えられ、登校が許可されます。幼稚園や保育園でもこれに準じた扱いをしています。インフルエンザウイルスは鼻腔や咽頭の粘膜細胞に感染して発症しますが、最近使用されるようになった抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖や細胞外への放出を抑えて、発熱を抑える効果があります。ですから病初期に内服する薬です。著効すると翌日から解熱するので、体力が充分回復する前だったり、ウイルスがまだ残って感染力を秘めているうちに(これは憶測の域を出ませんが)、はやばやと登校可能になることもあるかも知れません。こういったことを検討すれば、今後学校保健法の見直しも必要になると思われます。
 ちいさいこどもは発熱、食欲低下などの結果、脱水におちいりやすいので、水分の補給に努めます。下痢や嘔吐で電解質が失われたら、ミネラルの補給が必要です。体力を維持するため、栄養のある、消化、吸収しやすいたべものを与えます。通常発熱には解熱剤が使用されると思いますが、解熱剤の副作用も考慮し、最近はアセトアミノフェイン(ナパ、アンヒバ坐剤など)が推奨されています。アスピリンは、ライ症候群の発症危険あり、禁忌です。ボルタレンはインフルエンザ脳症(参考文献http://hobab.fc2web.com/sub4-influenza-encephalopathy.htm)との関係が危惧されており、禁忌です。ポンタールも同様の可能性を考えてまず使われません。結局、解熱剤はアセトアミノフェイン(ナパ、アンヒバ坐剤など)だけが無難です。常用量で、1.5度から2度弱の解熱が期待できます。ただし、効果は短時間のみです。解熱していると通常、元気が出て、その間食欲が出るメリットがあります。必要水分量もその分減ります。冷やすときの注意は、発熱の項に記載しました。
 予防接種はある一定の効果は期待できるとされています。しかし接種株と流行株が違っていれば、罹患の危険にさらされますし、インフルエンザAウイルスは変異することが多いので予防接種が無効のことも多いです。予防接種を受けても、インフルエンザBにかかるひともいます。いっぽう、予防接種で発病をまぬがれる人もいると考えられています。成人は最近1回法になりましたが、小児では、小学生までは、従来どおり1週間以上の間隔をあけて4週間以内に2回接種する方法でおこなわれることが多いと思います。おおむね、接種後1ヶ月で効果が現れ、効果は3ヶ月ほど持続するといわれます。ですから、11月の末までには予防接種が完了していることが望まれます。流行シーズン中の予防対策としては、極力人混みを避けること。睡眠不足、過労で体調不良にならないよう、日常生活に留意しましょう。うがいの励行でのどを潤おし、消毒しましょう。手洗いも忘れずに。部屋の乾燥に注意し、湿度60〜70%は確保しましょう。マスクはのどや鼻腔の乾燥を防ぐ点で有用と考えます。
 インフルエンザはかぜではありません。流行シーズン、臨床症状、診察結果から、診断を誤る可能性は低いと思います。これまでと違うことは抗インフルエンザ薬が出来たこと、インフルエンザの診断検査キットが出来たことがあげられます。インフルエンザと思われたら、検査で確かめるという手順がポピュラーになってきました。検査をしないで抗インフルエンザ薬を処方したとき、内科では保険診療の査定が支払い側からされるということもあるようです。また、検査が陰性のため、連日検査をして、検査回数過剰になり、査定されることもあるようです。注意しなくてはいけないのは、発病初日は検査陰性で、翌日陽性だったり、翌々日陽性になるケースもたくさんあることです。抗インフルエンザ薬の使用が遅れない配慮が望まれます。
 乳幼児が発熱し、けいれんしたとき、多くは熱性けいれんであり、あまり心配しなくていいのですが、インフルエンザ(シーズン)で、発熱しけいれんがあれば、入院と指示されることがあります。インフルエンザ脳症がよぎるからです。近年、日本ではインフルエンザ脳症と診断されることがあるようになり、その数は年間100〜200人ほどのようです。諸外国に比べて日本で多いといわれます。その原因はしだいに明らかになっているようですが、そのなかで、一部の解熱剤は症状を悪化させるということが示唆されてきました。ボルタレンは禁、ポンタールも同様に考えます。アスピリンはライ症候群の関連で禁。すでに述べたように、解熱剤はアセトアミノフェインのみが推奨されます。インフルエンザで意識障害、異常行動、けいれんがみられたらインフルエンザ脳症を考えます。死亡率約30%、後遺症約25%と報告されています。


検査キットでインフルエンザ陽性であったこどもののどのようすです。

2.24
Mちゃん(1)
7歳
インフルエンザA
2.24
Mちゃん(2)
2.24
Y君
9歳
インフルエンザB
2.26
Yちゃん(1)
8歳
インフルエンザB
2.26
Yちゃん(2)
2.26
Sちゃん
3歳
インフルエンザB
2.26
I君(1)
6歳
インフルエンザA
2.26
I君(2)

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                 タミフル
                                 2007年3月23日

タミフル内服後に転落、飛び出し事故が相次ぎ、このほど、厚生労働省は10代のインフルエンザ罹患者にタミフルは原則投与しないよう通知をだした。

昨年11月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、タミフルの服用時に、自傷や混乱した行動を示すことがあり得るとして、注意を喚起しています。

インフルエンザ脳炎・脳症発症の危険と、タミフルによるかもしれない異常行動の危険とを天秤にかけてよく吟味したうえで、投与は慎重にすべきでしょう。

これまで、タミフルの消費は日本が全世界の80%を占めているという。

タミフル投与の対象は、インフルエンザ脳炎・脳症の危険群と、高病原性鳥インフルエンザ、また新型インフルエンザ発生時などに限定されていくのではないかと思われます。

タミフルの原料の一文は雑感であり、科学的根拠はまったくありません。

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       インフルエンザ迅速診断測定キットの限界
                                 2007年3月28日

インフルエンザを疑ったばあい、インフルエンザ迅速診断測定キットが使われます。15分から20分以内に結果が出るので、いまは必ず検査されるはずです。常識と思いますが、発症初期に陰性で、翌日陽性となるケースはたくさんあります。結果陰性でしたとおかあさんに告げると、「まあ、よかった。インフルエンザでなかったんですね」と聞かれます。「きょうは陰性ですが、今夜、明朝と、39度以上高熱続いたら、あす、もう一回調べましょう。翌日陽性のかたはたくさんいますので」と説明しています。

こういう、検査薬がなかったころは、臨床診断でした。症状を聞いて、診察して、医師が自分の判断で診断したのです。

大学病院とか、衛生研究所や研究機関、一部の病院を除いて、診断キット以外でウイルスを証明することは不可能でしょう。

迅速診断キットが陰性の結果であっても、インフルエンザは否定できないということを理解してほしいと思います。「ウイルスがいなかった」ということは、よほどの根拠が無ければ、なかなか断定できないというわけです。

インフルエンザ

2005年2月〜2006年1月

(

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