インフルエンザ脳症の詳細については専門文献に譲るとして、おおまかな内容について記述する。1歳から5歳に多い。発熱に引き続いて痙攣、意識障害、昏睡へと急激な経過をたどる。数日遅れて発症する場合もある。日本では年間100〜200人ほどの報告があるという。

症状:インフルエンザシーズン中、発熱に引き続いて、多くは発熱当日ないし翌日といった早期に、突然の意識障害が現れる。
けいれんは複雑型であったり、単純型でも、意識障害を伴うとき。
異常言動や異常行動がみられるとき。
以上のばあい、インフルエンザ脳症が疑われる。

意識障害について:インフルエンザに引き続き、意識障害ありと判断されたケースは、二次、三次病院へ。
Japan Coma Scale(JCS)20 (刺激すると覚醒する大きな声または体をゆさぶることにより開眼する)以上の意識障害は確定例として、特異的治療開始する。
(JCS)10 (普通の呼びかけで容易に開眼する 注:乳幼児の場合は飲み物を見せると飲もうとする、あるいは乳首をみせると欲しがって吸う)以上の意識障害が24時間以上続くときは、特異的治療開始。
(JCS)10未満であっても、その他の検査から脳症がうたがわれるとき、特異的治療開始。

けいれんに引き続くばあいは、アフタースリープとの鑑別。

けいれんについて:インフルエンザシーズン中、発熱し突然のけいれんが現れるばあい、複雑型けいれんはインフルエンザ脳症が疑われ、二次、三次病院へ
複雑型とは、単純型以外のもの。
単純型とは、持続時間が15分以内。繰り返さない。左右対称のけいれん。


異常言動・行動について:インフルエンザ脳症家族の会「小さないのち」アンケートによる
1.両親がわからない。いない人がいると言う。(人を正しく認識できない)
2.自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものを区別できない。
3.アニメのキャラクター・像・ライオンなどが見える、など幻視、幻覚的訴えをする。
4.意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない。
5.おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情
6.急に怒り出す、泣き出す、大声で歌いだす。

熱せん妄との鑑別を要する。

診断
:インフルエンザシーズン中、発熱に続き、@突然の意識障害が現れるばあい、A複雑型痙攣のみられるばあい、単純型でも、意識障害を伴うとき、B異常言動・行動の見られる場合、インフルエンザ脳症が疑われます。二次、三次病院で頭部CT検査を受けます。診断が確定したケースは特異的治療が開始されます。

インフルエンザ脳症の鑑別診断

感染症など
 1.脳炎・脳症
     単純ヘルペスウイルス
     突発性発疹のウイルス
     その他のウイルス
     マイコプラズマ
     百日咳菌
     その他の細菌
     その他の病原体
 2.髄膜炎
     細菌性
     結核菌
     ウイルス
     真菌
 3.脳膿瘍
 4.硬膜下膿瘍
 5.脱髄性疾患 ADEM MS
 6.SLE

頭蓋内疾患
 1.頭蓋内出血
 2.血管性疾患
     脳動静脈奇形
     もやもや病
     その他
 3.脳腫瘍

代謝性疾患・中毒
  Wilson病
  糖尿病
  など

臓器不全

その他
 不整脈
 熱中症など

その他の検査
  脳波
  頭部MRI
  血液:血小板、AST,ALT,CK,血糖、アンモニア、
  検尿

インフルエンザ脳症の治療指針
1.支持治療
2.特異的治療
    抗ウイルス剤
    メチルプレドニゾロン・パルス療法
    γーグロブリン大量療法
3.特殊療法
    脳低体温
    血漿交換
    シクロスポリン
    アンチトロンビンV大量療法

予後・後遺症
インフルエンザ脳症の予後として、急性期死亡30%、後遺症25%と報告されている。


参考文献:インフルエンザ脳症ガイドライン 厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班 新興・再興感染症「インフルエンザ脳症の発症因子の解明と治療及び予防方法の確立に関する研究」班 2005年11月

インフルエンザ脳症:http://hobab.fc2web.com/sub4-influenza-encephalopathy.htm

                         キッズ健康トラブルへ

インフルエンザ脳症について

2006年1月

(

MLインフルエンザ流行前線情報DBへリンク


        青森県感染症週報へ
        青森県インフルエンザ週報へ
           

inserted by FC2 system