川崎病2006.1

川崎病は多くが4歳以下の乳幼児期に発症する急性の全身の血管炎で、その原因は不明。冠動脈病変をおこさなければ、予後佳良な疾患である。(オーソドックスに考えれば、なんらかのウイルス感染症が一番疑われるが、いまだ原因不明)

症状 

急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群と同じ疾患。
1.急な発熱で発症し、高熱が5日以上続く。
2.発熱に引き続いて全身の皮膚に発疹がみられる。
  手掌、足背の腫れ(むくみ)〜解熱後の回復期に(膜様)落屑
  手足指先の発赤〜解熱後の回復期に(膜様)落屑
3.口腔粘膜の発赤充血
  唇の紅潮
  いちご舌
  両眼球の白目の充血(目やには無い)
4.頚部リンパ節腫脹みられることあり。(片側のことあり。痛みのため斜頚になることあり)

診断:上記症状による。
      厚生労働省川崎病研究班作成・診断の手引き・2002年2月改定5版を下記に抜粋すると

 A 主要症状
  1.5日以上続く発熱(ただし、治療により5日未満で解熱した場合も含む)
  2.両側眼球結膜の充血
  3.口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
  4.不定形発疹
  5.四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないしは指趾先端の紅班
               (回復期)指先からの膜様落屑
  6.急性期における非化膿性頚部リンパ節腫脹
6つの主要症状のうち5つ以上の症状の伴うものを本症とする。
ただし、上記6主要症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心エコー法もしくは、
心血管造影法で、冠動脈瘤(いわゆる拡大を含む)が確認され、他の疾患が除外されれば本症とする。

なお、診断基準を十分満たさない、不全例や軽症例もあり、注意を要する。(下記の随伴症状にも目を光らせる)

随伴症状

心血管の異常症状、所見、検査データ
消化管、肝臓、胆のうの異常
血小板増多、赤沈亢進、CRP陽性、アルブミン低下
尿沈渣の白血球
BCG接種部位の発赤、小膿胞等
etc

患者発生数、心・冠動脈病変と予後
2003年と2004年の2年間の患者数は約2万人弱で、2004年は過去最高の年間発生数であった。急性期の心障害は13.6%、心後遺症は4.4%、死亡例は2年間で8例であったという。また1970年の第1回全国調査からの報告された患者総数は20万人を超えた。

  1.急性期の心エコー検査で異常ない。
  2.一過性の冠動脈壁輝度の増強あった。
  3.一過性の拡大性病変が1ヶ月時には正常化した。
  4.急性期の一過性の心膜液貯留。
  5.急性期に治癒した一過性の心筋炎。
  6.急性期の一過性僧帽弁逆流。
以上の場合は、現時点では数年に一度の経過観察を高校卒業まで受けることが多い。
冠動脈病変の残存したケースは成人後も継続し循環器医の管理下に。

いずれ、全身の系統的血管炎に罹患したことを考慮すれば、冠動脈炎は必発と考え、健康管理には十分留意したい。

治療

1.アスピリン(アセチルサリチルサン)またはフロベン(  )
アスピリン30-50mg/kg/day(アメリカでは80-100mg/kg/day)分3経口投与、GOT200以上ならフロベン選択とされるが、アスピリン30mg/kg,肝機能異常例とインフルエンザ流行期はフロベンを4mg/kg分3経口で使用している。フロベンのほうが制約が少なく使いやすい。
アスピリンは抗炎症作用と抗血小板作用による血栓予防を期待して使用
解熱後はアスピリン10mg/kg分1に減らし、約1ヶ月投与。

2.ガンマグロブリン
冠動脈瘤発生危険群は発熱第10病日以内に2g/kgの投与を完了する。
     白血球数   :12000以上
     血小板    :35万未満
     CRP      :3+以上(約4.5mg/dl以上)
     ヘマトクリット:35%未満
     アルブミン  :3.5g/dl未満
     年齢      :12ヶ月以下(13ヶ月未満)
     性        :男児
 以上7項目中4項目以上でガンマグロブリン投与
 第9病日以内に判定(原田のスコア)

 400mg/kg/day5日投与が多かったが、2g/kg(40ml/kg)単回投与が冠動脈異常の発生率が低い、発熱期間を短縮するとの知見から、単回投与が多くなっている。
 適応例は発熱6〜7病日に投与開始している。
  

症例1:4歳 男児
2005年、左頚部リンパ節炎の診断で、他医より紹介され受診入院した。発疹、手掌の発赤、手足の腫れ、球結膜の充血加わり、発熱6病日に、口唇の紅潮加わり、川崎病と診断。ガンマグロブリン投与条件5項目該当し、400mg/kg5日投与した。第9病日GOT,GPT上昇みられ、フロベンに変更。心エコーで冠動脈拡張無し。
症例2:0歳3ヶ月19日 女児
2005年、38度台の発熱あり、第2病日受診、抗生剤等処方された。発熱は39度台もみられ、軽快しないため、第4病日再受診CRP5.0mg/dl,
PLT59.1万あり、精査のため入院となった。第5病日、手掌、手指先端、足底、足趾先端が紅潮す。夜間より、球結膜充血出現。第6病日川崎病の診断で、アスピリン30mg/kg/day処方。ガンマグロブリン投与条件4項目該当したが、解熱傾向みられ、結局投与しなかった。経過中冠動脈の軽度拡大が一過性に観察された。
症例3:0歳5ヶ月3日 男児
2005年、夕より発熱し、深夜39度台はじめての高熱みられた。鼻水少しあり、翌朝外来受診、URIとして内服処方された。20時ころひきつけた。翌朝再受診、40.9度あり、入院観察となった。第6病日まで、連日40度を超える弛張熱みられた。入院時赤沈1時間値94と亢進、CRP5.2mg/dl,WBC18,600,PLT49.7万、第4病日皮膚発疹、エコーで右頚部多房性リンパ節腫脹、第5病日球結膜充血、四肢末端の発赤腫脹ありと判断し、川崎病と診断した。第6病日ガンマグロブリン投与基準を満たし、2g/kg点滴静脈注射したら、速やかな解熱みられた。経過中軽度の冠動脈拡張が一時観察された。

予防接種
川崎病罹患児の予防接種について:冠動脈瘤があっても、発症2ヶ月から可能。
麻疹、風疹、おたふくかぜ、水痘の生ワクチンはガンマグロブリン投与例は、投与後6ヶ月は控える。麻疹は流行期でなければ、11ヶ月以上控える。
BCGとポリオは生ワクチンであるが、ガンマグロブリンの影響は受けない。


参考文献
川崎病Q&A、小児内科 Vol.35 No9,2003.9. 東京医学社
川崎病(MCLS,小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き 厚生労働省川崎病研究班 2002年2月改定5版
第18回川崎病全国調査成績
予防接種ガイドライン 2005年 改編
                                   キッズ健康トラブルへ

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