予防接種皮下注射手技2014.6.12.

1.予防接種の皮下注射接種部位 
皮下接種の候補場所は上腕接種では三角筋中央部と上腕後外部下1/3の部分と日本小児科学会ホームページに載っている。  わたしは、上腕伸(後)側下1/3の部位(肩峰と肘頭の間、下1/3の部位)に左右交互に接種することとしている

2.橈骨神経(とうこつしんけい)の走行と橈骨神経麻痺
橈骨神経(黄色で示した)は上腕骨の上部、後ろ側から外側に出てきて、上腕骨の外側面に沿って下斜め前に走り、肘窩の橈骨側に達する。


橈骨神経麻痺は橈骨神経あるいはその周辺に薬液を注入した際に発生する末梢神経傷害であり、上腕外側部に皮下注射してはいけない。三角筋中央部を選ぶばあいは、下方にずれて橈骨神経を傷害する事がないよう、橈骨神経の走行に充分留意すべきだ。(註:成人に上腕に筋注するばあい、肩峰から3横指下(約4cm)でやや前方が選ばれるようだ。また、肩の外側面の肩峰の下方3横指の上腕後側面の筋肉豊富な部位との記述も見受けられる。小児にやむを得ず筋注するさいは、わたしは大腿上部側面の筋肉に施行している))

3.皮下注射時の針の長さと皮下注射方法・皮下注射角度(1)
26G(ゲージ)注射針(針長13mm)を使用。最近の予防接種液は専用のシリンジに詰められ、注射針も用意されているのが多いが、針長はおおむね12〜17mmである。

拇指と他の4本の指で皮膚を挟んで圧迫すると少し盛り上がるので、ここに刺入する。

4.わたしの皮下注射法・皮下注射角度(2)

子どもの皮膚(表皮+真皮)は薄く、皮膚厚は0.5〜1mm程度である。
皮下脂肪は多い


こどもの腕を手指で挟み、接種部位を圧迫すると、左図のように皮下組織に接種する余裕が増す


26G(ゲージ)注射針(針長13mm)を使用するときは多くの場合針を完全に刺入するが、17mm針のときは刺入の長さは接種を受けるかたの状態により加減する
急速に注入すると痛みが増す可能性がある。
ゆっくりすぎると、たぶん不安な気持ちがつのるだろう。体動が増すかもしれない。
励ましながら、適度な速度で。
刺入時痛みが強くないか、また軽く注射筒を引いてみて血液の逆流が無いことを確認して、接種液を注入する。
接種後は異常が発生しないか観察のため、外来で20分〜30分やすんでもらい、様子を見てから帰宅。

通常の手技をとらないで、上記のやりかたにした理由、

1.真皮に近くの皮下に浅く接種されると、あとで皮膚の発赤や腫れが強く、あるいは皮下のしこりが目立つばあいがあると思われた。(インフルエンザワクチンやDPTなどを受けたことのあるかたを診察したときに感じた)
2.斜め刺入よりも垂直のほうがより痛点通過の可能性を最小におさえられると考えた
3.通常の方法でも間違えて筋注するとは考えられないが、より確実に
4.斜めよりも垂直のほうが神経繊維末端にさわる確率は下がると考えた

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下脂肪組織から構成される(文献6)が、便宜上、皮下組織を別扱いとする。なお、真皮と皮下組織の間に明瞭な境界は無い。わたしは皮下注する際は、真皮に近い表層部の皮下は避けて、できるだけ深くに注入するようにしている。


皮膚(表皮+真皮)の厚さは部位によって異なっているが約1〜4mmの間にあるとの記述がみられた。また、年齢によっても変化し、幼小児では成人に比して薄い(文献4)。新生児は0.5mm前後で、年長児は1mm前後との報告もある。
表皮の厚さはきわめて薄くほぼ0.1〜0.2mm程度であり、真皮の厚さは0.3〜2.4mmほどである(文献4)。
真皮は成長に伴い厚みを増し、皮膚は厚くなるが、表皮の厚さは11〜15歳が最も厚く、その後薄くなる(文献5)。

皮下脂肪の厚さは年齢により増し、5mm前後から20mm超に至る。男女差もあり、特に女子の皮下脂肪は10歳前後から急激に増加する。(文献4)




参考文献
1.http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_1101182.pdf日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方
2.注射と薬の安全ノート 青森県医師会 小坂康美 平成9年
3.注射による末梢神経損傷の実態と予防対策 赤石英 日本医事新報2512号 1972
4.小児の皮膚 小児内科 Vol.19臨時増刊号 1987 東京医学社
5.小児皮膚科学T 新小児医学体系大40巻A 1983 東京医学社
6.小児の発疹の診かた 小児内科Vol.42 No.1 2010 東京医学社

キッズ健康トラブルへ


inserted by FC2 system