注意欠如/多動性障害(AD/HD)2008.7.    2013.8アンケート用紙更新  2014.11追記

2014.11.追記


DSM-5でAD/HD関連の上位分類が大きく変わった
DSM-W-TR DSM-5
通常、幼児期、小児期または
青年期に初めて診断される障害
神経発達障害群 秩序破壊的・衝動制御・素行症群
注意欠如および破壊的行動障害 注意欠如・多動性障害
精神疾患名 注意欠如・多動性障害
AD/HD
素行障害
Conduct Disorder
注意欠如・多動性障害
AD/HD
反抗挑戦性障害
ODD
素行障害
Conduct Disorder
反社会性パーソナリテイ障害
反抗挑戦性障害
ODD
特定不能の破壊的行動障害

2014.11追記
ICD-10
注意欠陥多動性障害、反抗挑戦性障害、行為障害の分類
ICD-10
(なお、ICD-11は 2015 年完成が予定されているとのこと)
小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
多動性障害 行為障害
(行為の障害は症例によっては、非社会的パーソナリテイ障害へと発展することがある。
行為障害は多動とは明瞭に分離されず、しばしば重なり合う。)
活動性および注意の障害 多動性行為障害 反抗挑戦性障害 種々のタイプの行為障害
注意欠陥多動性障害 多動性障害のすべての診断基準、および行為障害のすべての診断基準の療法が満たされる時





疾患の定義・概念(文献1,6)
不注意、多動性、衝動性を基本的特徴とする行動の障害である(文献1)

衝動的で落ち着きがなく、授業に集中できなかったり、不注意でボーっとして呼びかけられても気がつかなかったりする子ども(文献6)

米国の「精神疾患の分類と診断の手引き 第4版」(DSMW)では、注意欠陥/多動性障害と称し、主要症状を「不注意」と「過活動/衝動性」に分けている。7歳以前の発症、6ヶ月以上の持続、複数の場面で現れる、社会面あるいは学業面の著しい障害などを付帯条件とし、広汎性発達障害、精神統合失調症、うつ病などをのぞくと定められている。(文献6)



状態(文献1から抜粋)
1.乳幼児期
目を離すとどこかへ行ってしまう
睡眠が不安定
親のほうを気にせず動き回る
高い所によじ登る
遊びが次々と移る
養育困難
かんしゃく
反抗的
躾ができない

2.幼稚園、保育園
衝動的、気が散りやすい
乱暴
順番が守れない
トラブルがたえない

3.学童期
先生の話を聞けない
着席せずに歩き回る

学業に支障をきたし
仲間関係では孤立する

反抗的挑戦的な言動

学校における問題行動

4.思春期、青年期
反抗的挑戦的な言動
非行的行動

臨床症状(文献6から)
1.不注意(注意持続困難)
義務を果たしたり新しい物事を学習する際に、意識を集中しやり遂げることが困難なことが多い。
自分が楽しめることには特に努力を要しない
ストレスでパニック、落ち込み
空想に心を奪われてボーっとしていたり、周囲で起こっていることに気付かない

2.衝動性
反射的な反応
短絡的な反応
かんしゃく
過剰な収集癖

3.多動性
じっとしておれない
走り回ったり、机に登ったり
貧乏ゆすり
早口のたえまないおしゃべり
座っておれない
じっとしていることで緊張が高まる



医学的鑑別疾患(文献6より抜粋)

画像検査、脳は検査;脳腫瘍、脳奇形などの脳器質的疾患
視力低下
聴力低下
甲状腺機能亢進症など

病初期にAD/HDと誤診された小児神経疾患(文献1文献2小枝)
てんかん
脳腫瘍
もやもや病
亜急性硬化性全脳炎
副腎白質変性症
結節性硬化症
フェニルケコン尿症
Krabbe病
異染性白質変性症
くも膜のう胞
脳奇形
難聴
視力低下
水頭症
先天性サイトメガロウイルス感染症
染色体異常(47XYY)

病初期にAD/HDと誤診された小児内科的疾患(文献1文献2小枝)
甲状腺機能亢進症
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
気管亢喘息薬の副作用
慢性副甲状腺機能低下症

精神疾患との鑑別(文献1)
1.広汎性発達障害、アスペルガー障害
2.気分障害
3.分離不安障害
4.チック・トゥレット障害
5.ナルコレプシー
6.PTSD心的外傷後ストレス障害
7.児童虐待


心理検査

WISC-III 知能検査
K-ABC


DSM-W診断基準
(文献3からp43の抜粋簡略記載)
A. (1)か(2)のどちらか
(1)6項目6ヶ月持続したことあり、不適応的、かつ発達の水準に相応しない
<不注意>
a学業、仕事など綿密に注意できない。または不注意な間違えをする。
b注意の集中がしばしば困難
c話しかけられても聞いていないようにみえる
d指示に従えない。やり遂げれない。
e順序立て困難
f精神的努力の持続を要する課題を避ける、嫌う、いやいや行う。
g鉛筆、本、道具、宿題などしばしばなくしてしまう
h刺激ですぐ気が散る
i日々の活動で忘れっぽい

(2)以下の多動性_衝動性のうち、6項目6ヶ月持続したことあり、不適応的、かつ発達の水準に相応しない
<多動性>
aそわそわ、もじもじ
b座っていなくてはいけないのに席を離れる
c余計に走り回ったり、高いところによじ登る
d静かに遊んだり余暇活動につくことができない
eじっとしていない
fしゃべりすぎ

<衝動性>
g質問が終わる前に出し抜けに答え始める
h他人を妨害、邪魔、干渉

B 7歳以前から
C 学校、家庭など2ヶ所以上でみられる
D 著しい障害が存在するという証拠
E その他の症状は広汎製発達障害、統合失調症、またはほかの精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、ほかの精神疾患(例:気分障害、不安障害、解離性障害、またはパーソナリティ障害)ではうまく説明されない

混合型;A1,A2共にみたしている
不注意優位型;A1を満たすがA2を満たさない
多動性_衝動性優位型;A2を満たすがA1を満たさない

診断補助のためのアンケート用紙作成2012.11.30

診断補助のためのアンケート用紙作成2013.8更新



WISK-V知能検査

                 

治療(文献1、6)
ソーシャルスキルトレーニング
個人精神療法:リラクゼーション、事故有能感の形成、ほめる
運動訓練;衝動的で不器用なために失敗することも多いので、感覚統合訓練も有用
待つ訓練;ちょっと待って!→ごほうび
親子関係
保護者カウンセリング
学校の協力
担任教諭の対応


薬物療法;
1.中枢刺激薬;MPH(methylphenidate)
2.抗神経病薬
3.抗うつ」薬
4.抗けいれん薬;てんかんや脳波異常を並存するばあい

合併症状(合併疾患)(文献1)
1.反抗性挑戦障害、行為障害
2.気分障害、不安障害、適応障害
3.チック障害、排泄障害、睡眠障害
4.学習障害、運動能力障害、広汎性発達障害



 



参考文献
1軽度発達障害Q&A Q55 p343 小児内科 Vol39 No2 2007 東京医学社
2小枝達也:AD/HDの医学的・神経学的検査 齊藤万比古編:注意欠陥/多動性障害の診断・治療ガイドライン,じほう,東京,p56-58,2006
3軽度発達障害の臨床 横山浩之 診断と治療社
4WISC-III 知能検査 日本文化科学社 http://www.nichibun.co.jp/kobetsu/kensa/wisc3.html
 WISC-V 知能検査 http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/wisc.shtml
5学習障害(LD)・注意欠陥多動(ADHD) 小児科診療 Vol.65 No.6 2002 診断と治療社
6注意欠陥/多動性障害 宮尾 益知 小児内科 Vol38 増刊号 2008 東京医学社
7 ICD-10精神および行動の障害 新訂版 医学書院
8 DSM-W-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版 医学書院
9 DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 医学書院
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