ヒステリー2008.8. (文献1)
無意識の欲求不満や葛藤、不安など抑圧されたストレスによって、運動、知覚障害などの身体症状(転換症状)や意識障害(解離症状)が引き起こされる。
特徴的な性格傾向(ヒステリー性格)を有する。
幼児期では男女同数、思春期以後は女児が男児の2〜4倍。
発症は多くは10歳以上。
症状
身体症状(転換症状)
運動障害:失立、失行、振戦、全身痙攣、部分的な麻痺や強直、アテトーゼ様、チック様の不随意運動など
感覚障害:疼痛、手袋型や靴下型などの神経賜杯に一致しない知覚鈍麻、知覚過敏、視力低下、変形視、盲、螺旋状の視覚障害、難聴
自律神経障害:過呼吸症候群、呼吸困難、嘔気、嘔吐、眩暈、心悸亢進など
意識障害(解離症状)
もうろう状態、せん妄、幻覚、妄想など
症状は自分一人の場所や睡眠中には起こらず、
危険が予測される場所で発作が起こっても外傷をきたさない。
他の問題行動:退行、興奮、自殺企図、自傷行為など
症状の特徴:出現はしばしば急激、多彩で誇張的に訴え、医学常識と一致しない。
誘因となるストレスあり
現実からの逃避;欲求不満や葛藤の解消、
関心、同情を集め、手厚い看護を受けられる疾病利得がある。
性格傾向は未熟。自己中心的。虚栄心が強い。感情の起伏が激しい。
幼児期に溺愛されていると起こりやすい。
鑑別診断
器質的疾患
てんかん発作
今日の小児治療指針から一部を抜粋
1978.11.第3版:
ヒステリーの重要な症状は知覚障害、運動障害、痙攣発作の3つである。
2000.3.第12版
学問的には「意識して症状を出す詐病」と鑑別が必要である。詐病は本人が意識しているので、いわば「演出」的であるが、ヒステリーは本人が無意識である点に違いがある。
ヒステリー症状
1.転換症状(無意識な葛藤が身体症状に転換)
2.解離症状(人格や意識の統合性がうしなわれ解離する)
3.行動症状
2003.3.第13版
最近は解離性障害といわれヒステリーという用語は使われなくなってきている。
ヒステリーそのものは症状を有することにより心理的葛藤や精神的緊張を無意識的に回避できる(疾病への逃避)、一時的にしろ安定を得る(一時疾病利得)。つまり意識的に症状を装う詐病や仮病とは異なる。
2006.5.第14版
ヒステリーとは強い心的外傷、不安、心的葛藤が無意識に身体症状や精神症状となって発症する。その無意識症状をもって心的葛藤や緊張を回避してとりあえずの安定をとりもどせることができる状態である(疾病利得)。
DSM-WーTRでは、ヒステリーという疾患名は消え、身体表現性障害、解離性障害、演技性人格障害がこれにあたる。
ヒステリーの身体症状;自律神経系(腹痛、頭痛、呼吸困難、過呼吸、など)
運動系(失立、失歩、失声、運動麻痺など)
感覚系(視覚障害、難聴など)の障害として現れる転換型
精神症状;もうろう、健忘などの精神症状に現れる解離型がある。
心的外傷後ストレス障害PTSD文献2
Post-traumatic stress disorder
1980年カリフォルニアのバスジャック事件
1995年阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件
交通事故、その他の事故での恐怖体験
PTSDの症状
1)再体験;フラッシュバック。
悪夢として記憶が蘇ることがある。
2)回避・麻痺;その場を回避する。
感情が麻痺する。
3)過覚醒;不眠、敏感、興奮しやすく、攻撃的
心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、PTSD; Post-traumatic stress disorder)とは、心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後に様々なストレス障害を引き起こす疾患のことである。
心の傷は、心的外傷またはトラウマ(本来は単に外傷の意だが日本では心的外傷として使用される場合がほとんどである)と呼ばれる。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷がある。地震、洪水、火事のような災害、または事故、戦争といった人災や、テロ、監禁、虐待、強姦など犯罪による被害によって生じる。
PTSDの研究には、大きく分けて三種の流れがある
第一の流れは、19世紀後半から始まったヒステリー研究
第二の流れは、砲弾ショック(シェルショックともいう)、戦闘ストレス反応である。この研究は、第一次世界大戦における塹壕戦の経験を踏まえ、戦後米国と英国から始まり、ベトナム戦争後に頂点を極めた。
第三の流れは、ごく最近認知されてきた性的暴力と、家庭内暴力の外傷である。
日本では阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、新潟少女監禁事件、JR福知山線脱線事故の時に広く病名が知られるようになった。
もともとヒステリーの一症状であった解離症状は、第二次世界大戦で心的外傷を負った兵士に解離症状が多く認められたことから注目された。その後、解離性障害という一つの疾患概念として確立された。
DSM-W−TR
意識、記憶、同一性、または知覚についての通常は統合されている機能の破綻
下位分類
1)解離性健忘:重要な個人情報や外傷的な情報についての健忘症状
2)解離性とん走:解離症状を伴う予期せぬ放浪
3)解離性同一性障害:2つまたはそれ以上のはっきりと区別できるパーソナティ状態が存在し、また重要な個人情報の想起不能
4)離人性障害:身体から遊離しているという感覚
5)特定不能の解離性障害
鑑別診断
器質性精神障害:てんかん発作後のもうろう状態、電解質異常による軽度の意識障害、
虚偽性障害:疾病利得
Wikipediaから コピペタ
解離性障害(かいりせいしょうがい)とは、心的外傷への自己防衛として、自己同一性を失う神経症の一種。自分が誰か理解不能であったり、複数の自己を持ったりする。
症状の発生と、ストレッサーの間に時期的関連があることが診断の必要条件である。
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10450500.html
どんな病気か
強い葛藤に直面して圧倒されたり、それを認めることが困難な場合に、その体験に関する意識の統合が失われ、知覚や記憶、自分が誰であり、どこにいるのかという認識などが意識から切り離されてしまう障害です。解離性健忘(かいりせいけんぼう)、解離性遁走(とんそう)、解離性同一性障害、離人症性(りじんしょうせい)障害などの形をとり、また、身体症状に転換されて表現されることもあります。
参考文献
1標準小児科学 第4版 医学書院
2子どものこころの問題 小児内科 Vol38 No1 2006 東京医学社
3解離性障害ー診断と治療 木村宏之 小児内科 Vol38 No1 2006.1. 東京医学社
4今日の小児治療指針第3版 ヒステリー 1978.11.医学書院
5今日の小児治療指針第12版 ヒステリー(過呼吸症候群、心因性視覚障害、心因性聴覚障害を含む)、詐病
6今日の小児治療指針第13版 いわゆるヒステリー(過換気症候群、心因性歩行障害、心因性視覚障害などを含む)
7今日の小児治療指針第14版 いわゆるヒステリー(身体表現性障害、演技的人格障害)と詐病