軽度知的障害(軽度精神遅滞)2008.7.〜2014.11.追記

2014.11.追記
使用語の変更。Mental Retardation(DSM4TR)からIntellectual Disability(DSM5)へ。

DSM4TR DSM5
精神疾患名 精神遅滞
Mental Retardation
知的能力障害(知的発達障害)
Intellectual Disability(Intellectual Developmental Disorder)
定義(一部抜粋) IQ70またはそれ以下
適応機能の欠陥または不全が2つ以上の領域で存在
発症は18歳以前
定義 (一部抜粋改文)
A.臨床的評価および知能検査で確かめられる。
B.適応機能の欠陥。このため種々の場での年齢相当の日常生活活動に支障をきたし、継続的な支援を要する。
C.知的および適応の欠陥は、発達期の間に発症する。
軽度精神遅滞 IQレベル50〜55からおよそ70 軽度 (一部抜粋改文)
学齢期の子どもにおいては学習技能を身につけることが困難であり、年齢相当に期待されるものを満たすために、1つ以上の領域で支援を必要とする。
同年代に比べて、対人的相互反応において未熟。合図、コミュニケーション、会話、言語は未熟。社会的判断は未熟。そのためだまされやすい。
中等度精神遅滞 IQレベル35〜40から50〜55 中等度 (一部抜粋改文)
明らかな能力の遅れ。学齢期は読字、書字、算数などの発達は学齢期を通してゆっくり。同年代の発達に比し、明らかに制限される。
社会的行動、コミュニケーション行動は同年代に比し、明らかな違いを示す。話し言葉は単純。
重度精神遅滞 IQレベル20〜25から35〜40 重度 (一部抜粋改文)
通常、書かれた言葉、または数、量、時間および金銭などの概念を殆どほとんど理解できない。広範囲に及ぶ支援。
単純な会話と身振りによるコミュニケーションを理解。
すべての日常生活の上の行動に援助を必要とする。
最重度精神遅滞 IQレベル20〜25以下 最重度 わたしには難解な文章。

2014.11.追記
ICD-10
なお、ICD-11)は 2015 年完成が予定されているとのこと)
精神および行動の障害 精神遅滞「知的障害」
Mental retardation
定義 (一部抜粋改文)
精神の発達停止あるいは発達不全の状態
確定診断 (一部抜粋改文)
知的機能の水準の遅れと、通常の社会環境での日常的な要求に適応する能力が乏しいこと
標準化された手続きを用いていない場合、診断は暫定的な評価にすぎない
軽度精神遅滞
診断ガイドライン
(一部抜粋改文)
適切に標準化されたIQ検査であれば、50〜69の範囲が軽度の遅滞
自閉症、他の発達障害、てんかん、行為障害、身体障害などがあるときは、これらに<含>
中等度精神遅滞
診断ガイドライン
(一部抜粋改文)
IQは通常35〜49
重度精神遅滞
診断ガイドライン
(一部抜粋改文)
IQは通常20〜34
最重度精神遅滞 IQは20未満

以下の記述は2008.7.〜旧文のため、用語が精神遅滞mental retardationになっている。


精神遅滞の発見や診断の契機(文献1から)
乳児期前期 視線が合わない 表情が乏しい 笑顔が乏しい 運動が不活発あるいは過剰である 体重増加不良 運動障害の合併など

乳児期後期 模倣動作の乏しさ 非言語的コミュニケーションに対する反応の乏しさ

1歳以降 言語理解の遅れ 模倣動作ができない 指示が理解できない

2歳以降 発語の遅れ 

3歳以降 集団行動ができない 集団に参加できない


検査・診断
WISC-III 知能検査などで知能指数(IQ:intelligent quotient)が50〜69は軽度精神遅滞。(註:70という数値が算出されても62〜78位の幅がある)
知能検査が適用できない乳幼児の場合は発達検査(遠城寺式など)を参考にしたり、臨床的に評価する。

知能指数(IQ)=精神年齢/暦年齢x100  ……「従来の知能指数 (IQ) 」 狭義のIQ ;「従来のIQ」と表記する(Wikipediaから)

WISC-III 知能検査  略称 WISC-III(ウイスク・スリー) での知能指数  偏差値知能指数  広義のIQ ;単に「IQ」と表記する(Wikipediaから)
Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition
日本文化科学社http://www.nichibun.co.jp/kobetsu/kensa/wisc3.html

http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/wisc_aj.shtml
適用年齢 5歳0ヶ月〜16才11ヶ月


別のweb資料によると、
WISCV ウエクスラーサード検査 
一般知能を上位、下位に分類し、因子分析から得られた4つの群指数(言語理解、知覚統合、注意記憶、処理速度)により、言語性、動作性、全検査の3種類のIQによって測定。
検査方法は計算や物事の順序、話の内容など知的発達の状態を評価点をつけ偏差で表示することで分析的に判断する方法。
発達の特徴をより把握できる.
どの分野が得意、不得手なのかなどを判断できる。との記載あり。


知能指数 Wikipedia;からコピペタ

一般的に知能指数・IQと呼び習わすものには、生活年齢と精神年齢の比を基準とした「従来の知能指数 (IQ) 」と、同年齢集団内での位置を基準とした標準得点としての「偏差知能指数(Deviation IQ, DIQ, 偏差IQ、偏差値知能指数)」の2種類がある。すなわち、狭義のIQはDIQを含まずに従来のIQのみを意味するが、広義のIQはDIQも含むという事である。本記事では、DIQも含んで広義のIQを意味する場合は単に「IQ」と表記するが、DIQを含まず狭義のIQを意味する場合は「従来のIQ」と表記する。

ウェクスラー式では、「全検査IQ (full scale IQ, FIQ) 」「言語性IQ (verbal IQ, VIQ) 」と「動作性IQ (performance IQ, PIQ) 」に分かれて算出され、いずれもDIQである。なおFIQの数値はPIQとVIQの中間に位置するとは限らず、例えばVIQは87でPIQは86だがFIQは85である場合など、PIQとVIQのどちらよりも低い場合や高い場合がある。WISC-IIIやWAIS-IIIでは、さらに群指数という「言語理解 (VC) 」、「知覚統合 (PO) 」、「作動記憶 (WM) (WISC-IIIでは注意記憶 (FD) )」、「処理速度 (PS) 」の4種類の領域別の数値も算出され、これはIQと同じく中心値が100で標準偏差15の指数の形を取る。


[編集] 知能偏差値

知能の偏差値を「知能偏差値 (Intelligence Standard Score, ISS)」という。これは、知能を偏差値の形で表示したものであり、50を中心として上に行くほど知能が高いことをあらわしている。特徴としては、母集団の結果にばらつきが多い年齢層とばらつきが少ない年齢層の両方で、正確な表示ができることなどがあげられる。また、標準学力検査の結果も学力偏差値で表示される場合が多いため、IQと学力は比較しにくいが、知能偏差値と学力は比較しやすいという特徴もある。また、DIQはもともと偏差値・標準偏差の考え方を利用した表示法なので、知能偏差値はDIQと簡単に換算できる。伝統的に集団式検査に多い表示法である。

これは偏差知能指数 (DIQ) とは異なる。DIQは中心値が100で、知能偏差値は中心値が50である。

標準偏差が15のときの換算表
ISS 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20
DIQ 145 138 130 123 115 108 100 93 85 78 70 63 55

簡単に換算するには、標準偏差15の場合、

ISS × 1.5 + 25 = DIQ

とすればよい。





精神遅滞の診断基準

1.IQがおおよそ70以下。(乳幼児のばあいは臨床判断)
2.意思伝達、身辺整理、家庭生活、社会的/対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、学習能力、労働、余暇利用、健康、安全の領域のうち、少なくとも2領域で適応能力の欠陥や障害が存在する。
3.発症は18歳未満

DSM-Wによる定義 文献9
@明らかに平均以下の知的機能(IQ70またはそれ以下)、
A適応障害(意思伝達、自己管理、家庭生活、社会的・対人的技能、地域社会資源の利用、健康、安全のうちいずれか2つ以上の領域で欠陥または不全である)を伴い、
B発症は18歳未満である。


IQ70の扱いについての疑問>

webからコピペタで。http://personalitymooddisorders.suite101.com/article.cfm/understanding_the_dsmivtr
http://health.nytimes.com/health/guides/disease/mental-retardation/overview.html#Exams-and-Tests

Introduction to the DSM-IV-TR
Mental Retardation

Mental retardation is a condition diagnosed before age 18 that includes below-average general intellectual function, and a lack of the skills necessary for daily living.

Back to TopExams and Tests

below:2 ((階級・地位・度数・量・割合))…以下に, より低く[劣って], に達しないで(under)プログレッシブ英和中辞典
   [3]
(数量, 程度などが)..以下の[で], より少なく; ..未満で;(g1147above;新グローバル英和辞典

以下;プログレッシブ和英中辞典(1)〔その数量・程度を含まずその下〕less than; below; under
以下;ニューセンチュリー和英辞典:[1]【...より下】below....【...より少ない】less than..., under....(※いずれも厳密には...の数を含まず, less than [under] fiveは「4以下」 「5未満」の意となる.

未満;プログレッシブ和英中辞典:未満の|under; below; less than
    ニューセンチュリー和英辞典 under...;(...より少ない)less than....

ひょっとして英語には未満の概念はあるが、以下を表す単語が無い?
Admission is half price for children twelve or under.
ten or fewer companies
What he demands is decent treatment─neither more nor less (than that).


以上;プログレッシブ和英中辞典:(1)〔その数量・程度を含まずにその上〕more than; over; above 
                     (2)〔その数量・程度も含めてその上〕and [or] over, and [or] above

以上;ニューセンチュリー和英辞典:more than, overはほぼ同意だが, more thanの方が普通の言い方. aboveは一般に最小限度や基準値などを上回る場合に用いられる.なお, more than, over, above...は日本語の「...以上」と違って,厳密には...の数を含まない.例えばmore than [over, × above] ten applesは, 11個以上のリンゴを意味する. 10個以上のリンゴは,正確に言うならば, not less than [at least] ten apples; ten or more apples; ten apples and overとなる:日本では20歳以上の人に選挙権があるIn Japan people can vote when they are 20 or over [× over 20].(※over 20とすると20歳を含まない)しかし,日常的にはmore than, overで十分間に合う.

結論:線引きをすれば、IQ70は境界レベル。〜69知的障害。


しかし、こんなweb siteも。http://www.mindsite.com/dsm_iv/disorders_usually_first_diagnosed_in_infancy_childhood_or_adolescence
DSM-IV-TR
? Disorders usually first diagnosed in infancy, childhood, or adolescence 
Mental Retardation. This disorder is characterized by significantly subaverage intellectual functioning (an IQ of approximately 70 or below) with onset before age 18 years and concurrent deficits or impairments in adaptive functioning.

Formal DSM-IV-TR (2000) Recognized Criteria for Mental Retardation
http://scf.mhmrtc.org/poc/view_doc.php?type=doc&id=10346&cn=208

The current DSM-IV criteria for diagnosing mental retardation are as follows:

1. Significantly sub-average intellectual functioning: An IQ of approximately 70 or below on an individually administered IQ test. For infants, a clinical judgment for significantly sub-average intellectual functioning.

2. Concurrent deficits or impairments in present adaptive functioning (i.e., the person's effectiveness in meeting the standards expected for his or her age by his or her cultural group) in at least two of the following areas:

これだとIQ70は知的障害の範疇。

DSM-W-TRによる軽度発達障害の診断基準 (文献10)
1.精神遅滞
A.明らかに平均以下の知的機能;個別施行による知能検査で、およそ70またはそれ以下のIQ(幼児においては、明らかに平均以下の知能機能であるという臨床的判断による)
B.同時に現在の適応機能(すなわちその文化圏でその年齢に対して期待される基準に適合する有能さ)の欠陥または不全が、以下の2つ以上の領域で存在:コミュニケーション、自己管理、家庭生活、社会的/対人的技能、地域社会資源の利用、発揮される学習能力、仕事、余暇、健康、安全
C.発症は18歳以前である
▼知的機能障害の水準を反映する重症度に基づいてコード番号をつけよ
317 軽度精神遅滞:IQレベル50〜55からおよそ70

American psychiatric association;Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 4th ed, Text revision. (DSM-W-TR),2000 (高橋三郎他、訳:DSM-W-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル、新訂版、医学書院、東京、2004)




原因
約60%が原因不明

精神遅滞の病因分類(文献2,7から抜粋、改変)

1.出生前
 1)先天性代謝異常症、変性疾患、神経筋疾患など

    代謝変性疾患
     1)アミノ酸代謝異常症:フェニルケトン尿症、アルギニン血症、楓糖尿病、非ケトン性高グりシン血症、メチルマロン酸血症など
     2)ライソゾーム疾患:GM1ガングリオシドーシス,Tay-Sacks病、Sandhoff病、Gaucher病、Niemann-Pick病、異染性白質変性症、ムコ多糖症、ムコリピドーシスなど
     3)糖代謝異常:ガラクトース血症など
     4)金属代謝異常症:Wilson病、Menkes病
     5)核酸代謝異常症、核酸修復機転異常症:Leisch-Nyhan症候群、色素性乾皮症
     6)その他

    

    神経皮膚症候群
      結節性硬化症
      神経線維腫症候群
      Sturge-Weber症候群
      色素失調症など

     福山型先天性筋ジストロフィー(FCMD)
     先天性筋ジストロフィー


 2)染色体異常症(Down症候群、5p-症候群、脆弱X症候群、Klinefelter症候群、13Trisomy,18Trisomy,4p-症候群、18q-症候群)
 3)奇形症候群(Cornelia de Lange症候群、Sotos症候群、Pierre Robin症候群など)
 4)脳形成障害(小頭症、神経管閉鎖障害、神経細胞遊走障害、髄鞘化障害など)
 5)胎内環境の影響
   ・感染症(サイトメガロウイルス、風疹、トキソプラズマなど)
   ・催奇形因子(アルコール、薬物、放射線など)
 6)多因子遺伝性(生理型、家族性)


  
2.周生期
 1)子宮内の異常(胎盤機能不全、多胎、超早産児、胎内栄養障害など)
 2)新生児期の異常
   ・低酸素性虚血性脳症(頭蓋内出血、脳室周囲白質軟化症など)
   ・代謝性疾患(低血糖、高ビリルビン血症など)
   ・感染症(単純ヘルペス、化膿性髄膜炎など)
3.出生後
 1)頭部外傷(脳挫傷、頭蓋内出血など)
 2)感染症(化膿性髄膜炎、脳炎、脳症)
 3)てんかん
 4)中毒(鉛など)
 5)栄養障害
 6)低酸素性脳症(溺水、窒息など)
 (7)養育不備、社会的要因)
4.不明
 家族性
 低文化性
 特発性

治療

[医学的治療]
 遺伝子治療の試み
 骨髄移植
 フェニールケトン尿症の低フェニルアラニン食
 抗てんかん薬
 注意の被転導性に対してメチルフェニデイト
 抗神経病薬(ハロペリドール、クロルプロマジン)

[リハビリ・療育・教育]
理学療法;運動発達
作業療法・感覚統合療法;日常生活活動
言語療法;

療育活動
発達年齢が2歳〜2歳半くらいに至ったら、健常児集団での保育に参加させる
身体的な障害を伴えば肢体不自由児の通園施設を勧める
養育不備な環境の際の対応など

就学時
通常学級、特殊学級の選択


軽度発達障害(文献6などから)
 
軽度発達障害としての問題が明らかとなってくるのは、ボーダーライン(IQ70〜90程度)ないし、軽度の上のほう(およそ60以上)(文献5)の場合
不登校傾向、学力不振の児童のなかに軽度発達障害児がいるのを見落とさないように。
軽度精神遅滞児は学習援助を要する。


知的障害境界(文献8)
集団における知能指数(IQ)の分布は平均値を100とした場合、標準偏差をほぼ15として正規分布をとる。平均値より2x標準偏差(SD)を超えて低い場合を、明らかな低下としている。しかし実際の社会生活においては1標準偏差以上低いものが問題になるので、正常と精神遅滞の間に境界児の概念をおく。


     測定知能の水準(文献8を改変した)

(MIL) 遅滞程度 IQの範囲 Wechsler法
(SD=15)
Binet法
(SD=16)
普通 100-1SD≦IQ 85以上 85〜 84〜
T 境界線 100-2SD≦IQ<100-1SD 70〜84 70〜84 68〜83
U 軽度 100-3SD≦IQ<100-2SD 55〜69 55〜69 52〜67
V 中度 100-4SD≦IQ<100-3SD 40〜54 40〜54 36〜51
W 重度 100-5SD≦IQ<100-4SD 25〜39 25〜39 20〜35
X 最重度 IQ<100-5SD 〜24 〜24 〜19


法律上の定義 WIKIPEDIAよりコピペタ

法令上、一般的な知的障害の定義は存在しない。福祉施策の対象者としての知的障害者について定義する法令は存在するが、個々の法令においてその定義はまちまちである。客観的な基準を示さず、支援の必要性の有無・程度をもって知的障害者を定義する法令すら存在する。

客観的基準を示す法令にあっては、発達期(おおむね18歳未満)において遅滞が生じること、遅滞が明らかであること、遅滞により適応行動が困難であることの3つを要件とするものが多い。遅滞が明らかか否かの判断に際して「標準化された知能検査(田中ビネーやWISCやK-ABCなど)で知能指数が70ないし75未満(以下)のもの」といった定義がなされることもある。

通常、事故の後遺症や痴呆といった発達期以後の知能の低下は知的障害としては扱われない。事故の後遺症については通常の医療給付の問題であり、痴呆については老人福祉の問題と考えられるためである。したがって、法令上の用語としての知的障害は、精神医学の領域における知的発達障害に照応することが多い。


上記の事故の後遺症についての文章は、行政の立場でのものだが、発達期(小児期)の事故の場合は知的障害として扱うと思われる。医学的には精神遅滞の原因の一つに頭部外傷が挙げられる。


療育手帳
申請により精神遅滞と認定されれば療育手帳が交付される。
IQについては上記のように「70ないし75未満(以下)のもの」というばあいもあるようで、居住地域の市町村の担当課に相談すると詳細がわかるようだ。
70という数値が算出されても62〜78位の幅があるとされており、IQ値については、69ミマンと機械的に処理することはないものと推察される。
参考web:http://homepage2.nifty.com/Ks_Garden/taku/techou.htm

教育
教育現場での実情についてはつまびらかでないが、文献11、12、13の資料を再掲してみると、

IQ値を標準偏差値でみるばあい、85以上が普通、70から84が境界線とされる。この境界線にいる児童生徒は授業にあたってなんらかの援助が必要と思われる。しかし、文献10、11、12にあるウエクスラー式検査の知的水準の分類では70〜79が境界線となっており、80〜84の児童生徒は平均の下に位置している。実際の教育現場では、80ミマンが授業上の支障を感るラインとしているのかもしれない。
就学児童健診では、この点にも注意を払う必要があると思われる。


参考文献
1知的障害(精神遅滞) 平岩幹男 小児内科 Vol.38 増刊号 2006 東京医学社
2精神遅滞 安田寛二 小児内科 Vol.35 増刊号 2003 東京医学社
3遠城寺式 乳幼児分析的発達診断検査 http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/enjoji.shtml
4WISC-III 知能検査 日本文化科学社 http://www.nichibun.co.jp/kobetsu/kensa/wisc3.html
 WISC-V 知能検査 http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/wisc.shtml
5S-M社会生活能力検査 日本文化科学社 http://www.geocities.co.jp/NeverLand-Mirai/9326/s-m.html
6軽度発達障害の臨床 横山浩之 診断と治療社
7知的障害(精神遅滞) 堀本れい子 加茂牧子 小児内科 Vol33 増刊号 2001
8標準小児科学 第2版、 医学書院
9標準小児科学 第4版、 医学書院
10軽度発達障害Q&A 小児内科Vol39 No2 2007.2. 東京医学社
11WISK-V知能検査の理論と結果の解釈  中央教育事務所 曹山和彦 http://www.pat.hi-ho.ne.jp/soyama/kensyu/siryo/22wisc.pdf
12軽度発達障害の支援に生かすWISK-V知能検査の解釈 http://www.akita-c.ed.jp/~ckyk/kenkyu/h15/pdf/tok/10.pdf
13WISK-V知能検査結果の見方 http://www.jttk.zaq.ne.jp/babmt806/newpage10.html
14ICD-10精神および行動の障害 新訂版 医学書院
15DSM-W-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版 医学書院
16DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 医学書院


知的障害(精神遅滞)があるのか無いのか。軽度発達障害があるのか無いのか。判断されるのは本人にとってまことに重大である。
わかっているようで意外と判断に難渋するばあいがある。
Case1:13歳女児。中学1年生。普通学級在籍。学業の遅れ。WISC−V VIQ70, PIQ73,FIQ68 言語理解71、知覚統合80、注意記憶82、処理速度66(N) SM社会生活能力検査指数87
知的障害(軽度)としたが…。
翌年、14歳。中学2年生。知的障害学級在籍。学業は低学年レベル、社会生活の未熟。WISK-V VIQ77,PIQ107,FIQ90  群指数不明 下位検査では算数5→3、知識6→6の他は得点の著明な増加あり(O)。SM社会生活能力検査指数88 全体的に3歳程度の遅れありと。


知能検査は慣れのためか、繰り返すと得点が増えるというが、FIQ68→90には驚いた。

Case2:14歳女児。中学2年生。国語・数学・英語の個別指導を受けている。「学習についていけない」という本人からの相談があったため、検査の対象となった経緯がある。WISC−V VIQ57, PIQ50,FIQ49 言語理解62、知覚統合53、注意記憶62、処理速度55 下位検査の得点は総じて低い(Y)。SM社会生活能力検査指数98
IQ値は明らかに低い。社会生活指数98だが、この値は低いようで、全体的に1歳程度の遅れがみられると判断されていた。
社会的/対人的技能、学習能力の2領域の障害ありとすると、精神遅滞と診断される。しかし、1歳程度の社会生活の遅れは有意とするかは判断に迷うが、FIQ49は明らかに低く、改めて、MRの診断基準について考えさせられる。FIQ49のこが社会生活の遅れが1歳程度ですむものかという疑問もある。

SM社会生活能力検査は精神発達遅滞児の診断に不可欠な要素である社会生活能力を適格にとらえる。とあるが…、。評価法は??

Case3:6歳男児。小学1年。自分勝手な行動が多い。落ち着きが無くじっとしていない。他人に危害を加えることがある。整理整頓ができない。友達とのトラブルが多い。このケースはWISC−V VIQ89, PIQ75,FIQ80 言語理解89、知覚統合80、注意記憶94、処理速度78(H) SM社会生活能力検査指数82であった。
1年後、7歳、小学2年。行動が遅い、片付けが苦手、自分勝手な行動が多いとの訴えがあった。落ち着きが無く、じっとしていない。指示により、集団行動に参加する。他人に危害を加えることがある。時々注意が必要。国語算数は個別指導を受けている。学習面と生活面の指導が必要とされた。WISC−V VIQ72, PIQ76,FIQ71 言語理解65、知覚統合76、注意記憶94、処理速度80(Y) SM社会生活能力検査指数76であった。

WISK-Vによる知能水準の分類では、80〜89平均の下。70〜79境界線。69以下精神遅滞とされ、前年は平均の下、当年は境界線ということになる。
前年は学習障害。ADHDの合併に留意。アスペルガー症候群の合併に留意。破壊的行動障害の合併に留意。神経症性障害の合併に留意。とされたが、当年の検査では精神遅滞境界児ということに…。学習障害はIQ>70が前提であり、当年の状況は境界線+ADHDも加わりそうだ。

数年ごとに診断基準が改定されていくことをどう考えるか。ある人間をどの精神的グループにすみ分けするかの作業のあやふやさを感じる。脳内のどこかの機能が偏奇していると思われるが、基礎疾患名が確立されていない場合も多い。いまの個人データと今の診断基準からすれば、このこはどこの精神グループにはいるのが似つかわしいかの作業。主と従に分かれることもありうる。

このこはじつは境界児であった。このこはじつはADHDであった。このこはじつはPDDであった。このこはじつはAspergerであった。などなど。診断に迷うケースは小児精神科医にゆだねるべき。

Case4:11歳男児。小学6年。このこはIQ平均の上である。
4年前、7歳時。VIQ80, PIQ103, FIQ90であった。SM社会生活指数79 特に集団参加の遅れが目立つ。集団での授業は支障あり。外で一人で遊ぶ。集団活動に馴染めない。はしをうまく使えない。算数は個別学習をためしている。社会的な行動や集団での行動がかなり難しいと思われる。アスペルガー症候群と診断された。
今回は集団の中では授業内容がわからないようだ(算数国語)とのことであった。文字を書くことに苦手意識がありそうと。VIQ104, PIQ118, FIQ112 SM社会生活指数79 意思交換、集団参加、自己統制の領域が特に低い。名前を書いてもらうと、綺麗に上手に整った字で書ける。しかし学校の先生によると普段はミミズの這ったような字とのこと。


学習障害のようにも思われるが、印象的にはアスペルガー。しかし、診断基準に照らすと合わない。集団の中ではうまくいかないこのようだ。高機能非定型自閉症。


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