あかちゃんの下痢2008.1.改稿
母乳、ミルクは続行し、市販のORS(oral rehydration therapy solusion)(ブドウ糖ー電解質溶液)で水分とミネラルを補充する。
嘔吐がなければ、いつもの食事再開。ただし、牛乳禁、甘すぎるもの禁、脂濃すぎるもの禁。

下痢とは
 糞便の性状が軟らかくなり、液状になった状態
 軟便、泥状便、水様便など。
乳児の下痢は殆どが2週間以内に治まる急性下痢症で、たいていウイルス感染による。

単一症候性下痢
 下利便のみということ。他の随伴症状(不機嫌、食欲低下、吐く、体重減少とか増えない、発熱、風邪症状、中耳炎などなど)が無い。
母乳栄養児の便はやわらかく、べちゃべちゃのことあり、おむつかぶれにならないよう、おしりの管理のみ気をつければいい。これがいい例でしょう。

ウイルス性胃腸炎
 ロタウイルスノロウイルスについてはそれぞれの項参照で。、
外来でもっとも多いのは、風邪ウイルス感染に伴う下痢。ウイルスの種類は多数です。代表的なウイルスを挙げると、
下痢を伴う夏風邪ウイルスは、エンテロウイルス族(コクサッキーウイルスA エコーウイルス)
晩秋から冬季 ノロウイルス ロタウイルス 
通年性 アデノウイルス。

血液や粘液が混じる粘血便のときは細菌感染が多い
カンピロバクター、サルモネラ、O157などの病原大腸菌、ブドウ球菌(毒素性は嘔吐、下痢のみ)、赤痢、エルシニアなど。

腸管外感染性下痢
 中耳炎、肺炎、尿路感染など。

感染症以外の下痢
1.抗生物質などの薬剤性下痢
2.アレルギー;ミルクアレルギー、タマゴアレルギーなど
3.乳糖不耐症
4.食餌の過誤;離乳食を急ぎすぎたとか、新しいメニューがうまくいかなかった、新しい食材、ミルクのメーカーをかえたら下痢したというケースもみられるようです。これらはもとに戻すと通常すみやかによくなる。
5.その他稀な疾患


一歳前の食餌療法と治療薬
 わたしは以下のようにしてきました。、
1.母乳栄養のばあいは続行します。
2.粉ミルクのばあいは2割薄めて与えます。
3.ジュースお休み。(注;2007.3.厚生労働省より、「離乳の基本」が改定された。これに伴い、あかちゃんにジュースを与えるのは不適切となった。)
4.離乳食お休み
5.水分補給は、湯冷まし、番茶などで。しかし以下に記載したブドウ糖ー電解質溶液のほうがいい。
6.下痢嘔吐で失ったミネラルと水分、糖の補充にソリタ顆粒T2号、3号あるいはアクアライトやビーンスタークポカリスエットなどの経口電解質液。(この際、ミルクを薄める意義は無い)
7.嘔吐を伴うばあいは、吐き気がおさまってから、経口開始してみる。わたしはリンゴをすりおろして与えるよう話してます。
8.発熱を伴うばあいは、不感蒸摂量が増えるので、水分を多めに与える。


下痢がおさまったら、止痢剤が処方されているばあいは続行で、数日かけて、ジュース(注:2007.3.より、離乳の基本が改定され、これに伴い、あかちゃんにジュースは不適切な食材となった)、離乳食をもとにもどす。止痢剤が処方されているばあい、一日排便無かったら、止痢剤は止めるが、排便あるときは、食事が元に戻った時点で止痢剤をやめる。


 吐き気止めの座剤や下痢止めが処方されることがあります。脱水があったり、想定されるばあいは点滴されます。
細菌性のばあいは、抗生剤が使用されることがあります。
粘血便あり、症状が強いときは、通常入院加療されます。

おしりはきれいに保って、オムツかぶれにならないよう留意してください。


下痢が遷延し、二次性乳糖不耐症を併発(酸臭便、クリニテスト陽性)したばあい、ガランターゼをミルクに混ぜる、あるいは無乳糖乳。アレルギー素因が強い例は牛乳タンパク加水分解乳、大豆乳など。

最近の食事療法の傾向
 American Academy of Pediatrics(AAP)の指針では 1.脱水の回復 2.電解質の補充 3.早期食事再開 腸管の早期回復(栄養補給)4.食事アレルギーの予防

具体的には
1.下痢が続いていても母乳、ミルクは続行し、市販のORS(oral rehydration therapy solusion)(ブドウ糖ー電解質溶液)を加える
2.嘔吐がなければ、いつもの食事再開
ただし、牛乳禁、甘すぎるもの禁、脂濃すぎるもの禁

注1.乳児にORS併用するとミルクを薄める必要が無い。
注2.早期食事再開の効果;蛋白、カロリー摂取は粘膜破壊の進行を防ぎ、修復を促進する。

経口電解質液の組成

電解質 (mEq/l)
Na    K     Cl
糖分
(%)
浸透圧
(mOsm)
ソリタ顆粒 T2号/100cc  60    20     50 2.2 230
ソリタ顆粒 T3号/100cc 35    20     30 2.3 179
アクアライト* 30    20     25 5.0 290
アクアサーナ 32    20     25 4.0 285
ポカリスエット 21     5     16.5 6.2 330
ビーンスタークポカリスエット 21      5      16.5 4.1 285
WHO-ORS 90    20     90 2.0 310

*アクアライトの浸透圧は290→260→200と変更されている(アクアライトORS2005.10.)電解質組成の変更あり。


「野菜おじやーORS]

 乳児
下痢症の食事療法 (小児内科1994 Vol.26増刊号)住山景一郎 小池道雄 にあった「野菜おじやーORS]の記載を転記しました。
 
 アクアライトよりWHO特にAAP-ORSに近いもので手軽に家庭で作れるものとして野菜スープ入りおじやがある。作り方は煮くずれしない程度に煮た野菜、じゃがいも、たまねぎ、にんじんなどで作った野菜スープからスープだけをとり出来上がり水分の1/2程度混ぜて五分粥のおじやをつくり、0.3%程度の塩味をつけて作った野菜スープ入りおじやは Na 50〜60mEq/l, K30〜40mEq/l程度になり、米の消化スピードを考えると糖含量もWHO-ORSに近い。これを上澄み少々から始めて自由に食べられるだけ与える。これが食べられるようになればすぐ普通食(牛乳は除く)にもどす。

[BRAT]

ウイルス性胃腸炎(小児内科 Vol.33 増刊号 小児疾患の診断治療基準 2001)の食事療法から転記しました。
 離乳開始後は、BRAT(Banana,Rice,Apple,Toast)を中心とした食事療法を行う。
バナナ、お粥、リンゴ、トーストです。


参考文献
1)小児内科 Vol.14 No7 小児下痢症 1982
2)小児内科 Vol.26 増刊号 疾病と食事 1994
3)今日の小児治療指針 14版 2006.5.
4)小児内科 Vol.21 No5. エンテロウイルス感染症 1989
5)小児内科 Vol.33 増刊号 小児疾患の診断治療基準 2001
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