ロタウイルス感染性胃腸炎2008.3改稿

 あかちゃんが罹患する急性胃腸炎のひとつですが、原因がロタウイルス感染とわかるようになったのは近年で、以前は白色便性下痢症とか、冬季嘔吐下痢症とよばれていました。さらにその以前は、白痢とか、小児仮性コレラと呼ばれていました。そしてこの名のとおりの特徴を持っています。初冬のころから、春先までの寒い気候のあいだに流行し、ウイルスは元気に活動し、特にあかちゃんに悪さをします。かぜをひくと消化不良をおこし、よく下痢をともないますが、程度は軽く、経過することがたいていです。しかしロタウイルス感染による急性胃腸炎のばあいは、頻回の嘔吐に続いて、かなりひどい下痢となり、急速に脱水に陥る危険がありますので、要注意です。下痢の回数は頻回で、便の色は薄い黄色だったり、レモン色だったり、白っぽい感じの薄い黄色といった色調になります。便には増殖したロタウイルスがたくさんいます。発熱を伴うことも多い。冬季にこういった症状の下痢嘔吐があかちゃんにみられたら、小児科受診をおすすめします。

 ロタウイルス感染による急性胃腸炎は、その他のかぜによる下痢などにくらべ、脱水におちいる危険がおおきく、医療機関を受診すると、脱水のとき点滴による水分とミネラルの補充を受けることがあります。これは手っ取り早い最も有効な治療法です。

おおむね、下痢、嘔吐、発熱があっても比較的元気で、座って遊べたり、あるきまわっているようなら軽症。
元気無く、すぐころっと寝転がってしまって不活発で、おしっこの量も普段に比べて少ないなら、点滴が必要でしょう。
重症の脱水におちいっているときは入院点滴が必要です。

吐き気がおさまり、経口摂取が可能になったら、処方されたソリタT顆粒2号でミネラルと水分を補充します。このような脱水治療用の電解質は規定の量(たとえば、1袋を100ccにとか、指定されています)の湯冷ましに溶かして与えます。溶かす水分の量をいいかげんにすると、かえって害になることがありますので、医師の指示に従い、作成してください。市販のあかちゃん用のミネラルウオーターやみそ汁の上澄みもいいでしょう。わたしはすりおろしリンゴをすすめています。また湯冷まし、番茶、麦茶などは水分の補給はできますが、ミネラルの補充ができない欠点があります。ミルク母乳ははやめに再開します。便の状態をみながら、野菜スープ、おかゆ、煮込みうどんなど与え、はやめにふだんの食事にもどしていきます。

 生後6ヶ月から2歳までが、もっともかかりやすく、症状もつよく脱水におちいりやすいといわれています。しかし、新生児でも発症するし、大人もかかります。便中のウイルスは感染力大です。おむつの取り扱いには充分注意し、手洗いはしっかりおこない、二次感染を防ぎましょう。




 

2月
生後5ヶ月
下痢、嘔吐、脱水
便は薄い黄色調でロタウイルス(+)
2月
生後5ヶ月
嘔吐、発熱
グリセリン浣腸の反応便
薄い黄白色の色調
ロタウイルス(+)
4月
生後11ヶ月
下痢、嘔吐、脱水
ロタウイルス(+)


2008.3.追記

乳幼児の急性胃腸炎の食事療法は年とともに変遷してきて大きくかわりました。以下に最近の動向を追記しておきます。あかちゃんの下痢からの抜粋です。

また、2007年に離乳の基本が改定され、従来おこなわれていた離乳の準備が不要とされました。このため、あかちゃんにジュースは選ばれなくなりました。

あかちゃんの下痢2008.1.改稿
母乳、ミルクは続行し、市販のORS(oral rehydration therapy solusion)(ブドウ糖ー電解質溶液)で水分とミネラルを補充する。
嘔吐がなければ、いつもの食事再開。ただし、牛乳禁、甘すぎるもの禁、脂濃すぎるもの禁。




最近の食事療法の傾向
 American Academy of Pediatrics(AAP)の指針では 1.脱水の回復 2.電解質の補充 3.早期食事再開 腸管の早期回復(栄養補給)4.食事アレルギーの予防

具体的には
1.下痢が続いていても母乳、ミルクは続行し、市販のORS(oral rehydration therapy solusion)(ブドウ糖ー電解質溶液)を加える
2.嘔吐がなければ、いつもの食事再開
ただし、牛乳禁、甘すぎるもの禁、脂濃すぎるもの禁

注1.乳児にORS併用するとミルクを薄める必要が無い。
注2.早期食事再開の効果;蛋白、カロリー摂取は粘膜破壊の進行を防ぎ、修復を促進する。

経口電解質液の組成

電解質 (mEq/l)
Na    K     Cl
糖分
(%)
浸透圧
(mOsm)
ソリタ顆粒 T2号/100cc  60    20     50 2.2 230
ソリタ顆粒 T3号/100cc 35    20     30 2.3 179
アクアライト* 30    20     25 5.0 290
アクアサーナ 32    20     25 4.0 285
ポカリスエット 21     5     16.5 6.2 330
ビーンスタークポカリスエット 21      5      16.5 4.1 285
WHO-ORS 90    20     90 2.0 310

*アクアライトの浸透圧は290→260→200と変更されている(アクアライトORS2005.10.)電解質組成の変更あり。


「野菜おじやーORS]

 乳児
下痢症の食事療法 (小児内科1994 Vol.26増刊号)住山景一郎 小池道雄 にあった「野菜おじやーORS]の記載を転記しました。
 
 アクアライトよりWHO特にAAP-ORSに近いもので手軽に家庭で作れるものとして野菜スープ入りおじやがある。作り方は煮くずれしない程度に煮た野菜、じゃがいも、たまねぎ、にんじんなどで作った野菜スープからスープだけをとり出来上がり水分の1/2程度混ぜて五分粥のおじやをつくり、0.3%程度の塩味をつけて作った野菜酢スープ入りおじやは Na 50〜60mEq/l, K30〜40mEq/l程度になり、米の消化スピードを考えると糖含量もWHO-ORSに近い。これを上澄み少々から始めて自由に食べられるだけ与える。これが食べられるようになればすぐ普通食(牛乳は除く)にもどす。

[BRAT]
ウイルス性胃腸炎(小児内科 Vol.33 増刊号 小児疾患の診断治療基準 2001)の食事療法から転記しました。
 離乳開始後は、BRAT(Banana,Rice,Apple,Toast)を中心とした食事療法を行う。
バナナ、お粥、リンゴ、トーストです。


参考文献
1)小児内科 Vol.14 No7 小児下痢症 1982
2)小児内科 Vol.26 増刊号 疾病と食事 1994
3)今日の小児治療指針 14版 2006.5.
4)小児内科 Vol.21 No5. エンテロウイルス感染症 1989
5)小児内科 Vol.33 増刊号 小児疾患の診断治療基準 2001

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